2024年 4月 29日 (月)

黒田新総裁の「異次元緩和」 コチコチ日銀官僚を説得できた理由

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   日銀は2013年4月4日の金融政策決定会合で、「これまでとは量的にも質的にも全く次元の違う」(黒田東彦総裁)新たな金融緩和策を決定した。日銀による資金供給残高(マネタリーベース)を2年で倍増するなど、大胆な政策をパッケージで示した。

   事前の金融市場では「黒田新総裁の就任から間がなく、一度にすべて決められないのではないか」との見方も出るなか、「満額回答でサプライズ」(国内証券)の結果となり、円安・株高・債券高(金利低下)が急速に進んだ。背景には安倍晋三首相のバックアップを受けた黒田総裁のリーダーシップと偶然の演出があった。

「市場に分かりやすく伝わる方法を考えよ」

「現時点でとれる手段はすべて講じた。これまでのように(政策を)小出しにしていては(2年を念頭に2%の物価上昇率の)目標達成はできない」

   4日の金融政策決定会合後の記者会見で、黒田総裁はこう強調した。用意したパネルを使って説明する表情は自信に満ちあふれ、常に笑みを浮かべる余裕もあった。冷静に淡々と記者の質問に応じていた白川方明前総裁とはあらゆる点で対照的だ。

   黒田総裁が白川氏の後任として就任したのは3月20日。初の金融政策決定会合まで2週間足らずだ。この間に日銀内をまとめあげられたのはなぜなのか。黒田総裁は就任後も国会での質疑などに追われており、日銀内でも「新総裁と打ち合わせする時間がとれない」との焦り、嘆きの声が聞かれていた。

   ロケットスタートできた理由として、日銀内からは「黒田総裁のリーダーシップ」を挙げる声が多い。かつては日銀の政策を公然と批判していた黒田氏だが、専門は国際金融で、必ずしも中央銀行の金融政策の細部まで熟知しているわけではない。黒田氏が日銀幹部に指示したのは「市場に分かりやすく伝わる方法を考えよ」「従来のように戦力(緩和策)の逐次投入はしない」など、いくつかの大枠の方針に限られ、政策の細部の設計は日銀執行部に任せたようだ。

「市場の期待を裏切った場合の反応が怖い」

   「アベノミクス効果」を背景に圧倒的な支持率を誇る安倍首相に指名された黒田氏からこう指示されれば、サボタージュするわけにはいかなくなるのが、「役人」の体質だ。日銀内にも「白川路線」に疑問を感じる向きも珍しくはなかっただけに、「面従腹背」の壁も生じず、短期間にトントン拍子に運んだらしい。「市場の期待を裏切った場合の反応が怖い」との思いが日銀内に広がっていたことも、短期決戦を可能にした。

   市場の一部では、日銀の「レジームチェンジ(体制転換)」のインパクトを印象づけるため、4月3、4日の定例の政策決定会合を待たずに臨時の会合を開く、との観測も一時、浮上した。しかし、定例会合が近づくにつれ臨時会合の観測は後退。代わって重要事項の決定は4月末に先送り、との見方が増え始める。こうした中で着々と政策パッケージを詰め、まとめて全部出したため、市場は好感したわけだ。

   まずは黒田総裁の思惑通りに事が運んだ形だが、本当にこれで景気好転を伴うインフレが来るかについては懐疑的な見方が日銀内にも根強い。

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