2024年 4月 27日 (土)

ザック監督「W杯優勝は私のノルマじゃない」 この意識で世界トップと戦えるのか

   サッカー日本代表が、ウルグアイ代表に完敗した。コンフェデレーションズカップで大量失点した守備陣が、またも崩れたのが大きい。

   1年後に迫るワールドカップ(W杯)ブラジル大会では、前回大会を超える結果が期待されている。だがアルベルト・ザッケーローニ監督はウルグアイ戦後、目標を優勝に置いていないような発言をして報道陣を驚かせた。

「もう少し違う言い方があった」

「W杯で優勝してほしいというリクエストは、私は受けていない」

   ウルグアイに2-4で敗れた2013年8月14日の試合後、ザッケローニ監督はこう明かした。代表監督に就任したのは2010年8月31日。W杯に出場し、世界の強豪との差を縮めるよう要請されていたそうだ。

   当時の報道を見ると、直近に迫っていたアジア杯で好成績を収める、W杯に出場すると掲げていたものの「W杯優勝」をぶち上げてはいない。監督の人選に携わった原博実強化担当技術委員長も「まずはW杯予選突破。W杯でいい成績を挙げること」と話したが、優勝の2文字は口にしていなかった。

   とは言え、すでにW杯ブラジル大会出場を決めている現段階で、指揮官自ら「頂点」を目指しているわけではないと発言しては、チームの士気にかかわるのではないか。サッカージャーナリストで「フットボールレフェリージャーナル」を運営する石井紘人氏はJ-CASTニュースの取材に、「『ザックらしい発言だな』との印象でした」と話す。外国人監督は日本人と比べて、メディアを気にする傾向が強い。かつてJリーグのチームで指揮を執ったドイツ人監督は、自分が報じられている雑誌をすべて翻訳させ、チェックしていたほど。敗戦の弁では言い訳することも多いそうだ。

「代表監督は記者会見で巧みな表現を用いながら説明し、時には『ぼかす』必要もあります。今回の発言は外国人監督らしく、『敗戦で何かが変わるわけではない』とアピールしたかったのでしょう。ただ、もう少し違う言い方があったとは思います」。

   確かにメディアは、この発言を「開き直り」「公の場で口にすることではない」とネガティブに報じたケースが多い。敗戦の言い訳に思わず口を突いたのか、素直に本心を打ち明けたのか――。いずれにしろ、少々思惑が外れてしまったかもしれない。

   中には、発言によって代表選手との意識のずれが生じたのではないかと懸念する報道もある。本田圭佑選手や長友佑都選手はかねてから、「W杯優勝が目標」と公言しているからだ。監督の本心は「優勝がノルマではない」と分かり、選手間にシラケムードが漂っては大変だ。

ミス続きの選手交代、守備重視に変更など「変化が必要」

   石井氏は「多少の違和感は残るかもしれませんが、メディアが騒ぐほど監督と選手の間に意識差が生まれたとは思えません」と話す。選手が掲げる「W杯優勝」という目標は、前回の南アフリカ大会の「ベスト16」を超えて高みを目指すために必要。だが強豪国と比較して現時点で日本代表が優勝できる力をそなえているかは別問題だ。コンフェデ杯と今回のウルグアイ戦で、トップクラスとどれほどの差があるかを痛感しているのは、ほかならぬ選手たちだろう。

   色めきたったメディアに対して、ファンは比較的冷静に受け止めているようだ。インターネット掲示板をみると「現状でW杯優勝掲げるような指揮官もどうかと思うがな」「ベスト4にも入ったことがない国で現実的な目標が優勝ですってありえないだろ」と「ザック発言」にある程度納得する雰囲気はある。ただし、監督自ら「優勝は目標ではない」と言ってはダメだろう、との声も出た。

   指揮官として、ウルグアイ戦でも守備崩壊を食い止める有効な策を打てなかったのは事実だ。サッカー解説者で元日本代表の北澤豪氏は8月14日放送の「NEWS ZERO」(日本テレビ系)で、「コンフェデ杯で大敗したときと変わっていない。対策はなかった」と指摘。同じくサッカー解説者の澤登正朗氏も同日放送された「報道ステーション」(テレビ朝日系)で「(守備の)最終ラインだけでなく、前線からの守備をしっかりしないといけない」と提言した。交代枠を全員使い切らず、今回召集した守備の新戦力を試さないまま終わってしまった点も疑問が残る。

   石井氏も「変化が必要」と主張する。ミス続きの選手を交代させる、あるいはフォーメーションを多少守備重視に切り替える、といった具合だ。ただザッケローニ監督は「我々には我々のアイデンティティーがあり、それを貫きとおさなければならない」と話しており、現状からの大きな変更は考えていなさそうだ。本田選手も試合後のインタビューで「僕らはこれで正しいと思っている。このやり方を貫く」と監督に信頼を寄せた。方向性がぶれていない以上、監督が現状を打破する妙手が打てれば、1年後の本大会での好成績につながるはずだ。

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