2024年 4月 29日 (月)

防空識別圏設定、このままでは「不測の事態」 中国は日本を挑発、攻撃するのを待っている

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   このままでは「不測の事態」も――中国側による「防空識別圏」設置問題をめぐり、東アジアに緊張が続く。

   「全く受け入れることはできない」――安倍晋三首相が抗議すれば、中国国防省は「道理がない」と辛らつに切り捨てる。韓国などもやはり中国に抗議するが、らちが開く様子はない。完全な平行線だ。

中国にとって何もいいことはない防空識別圏

新華社通信(ウェブ版)が掲載した中国の「防空識別圏」。日本の領土である尖閣諸島が含まれている
新華社通信(ウェブ版)が掲載した中国の「防空識別圏」。日本の領土である尖閣諸島が含まれている

   多くの専門家からは、そもそも今回の中国側の主張はまったくの「非常識」だという声が上がる。軍事ジャーナリストの神浦元彰氏によれば、お互いの防空識別圏が重なる場合、国同士で交渉してその境界を決めることが普通だという。森本敏前防衛相も出演したテレビ番組で、「常識外れ。センスがないというか、知的に欠けているというか……」と冷笑した。

   神浦氏によれば、そもそも中国側のレーダー網には、この領域をカバーできる能力がない。またすでに、日本や米国などは中国側が求める「フライトプラン」提出を拒む姿勢を示している。要するに、「設置したところで、中国にとって何もいいことはありません」(神浦氏)という代物なのだ。

   にも関わらず、中国側があえて設置発表に踏み切った理由は何か。神浦氏は、軍内部の強硬派に引きずられた結果ではないかと分析する。

「さまざまな国内問題を抱える中国では、現在軍の発言力が非常に高まっている。一方で中国は日清戦争で敗れて以来、海軍らしい海軍を持ったことがありません。空軍にしてもほぼ同じです。そのためにこうした問題について『一般常識』というものがない。ですから、一部の強硬派が騒げば、それに引っ張られてしまう」

日本側は絶対に手を出してはいけない

   とはいえ、すでにいったん設置したからには、それを最大限「活用」してくるだろう――そう読むのは、元航空自衛隊空将で軍事評論家の佐藤守氏だ。

「『防空識別圏』を日本や米国の航空機がクロスする場合、意地でもスクランブルをかけてくるでしょう。問題は、自衛隊機や米軍機に対し、中国側がどういう対応を取るかです」

   すでに尖閣周辺では、1月に発生した中国艦船による海自護衛艦への「ロックオン」事件など、「危うい」事態が複数回起きている。中国側と日米が日常的に角突き合わせる状態になった場合、日本側が懸念する通り「不測の事態」も起こりかねない。佐藤氏はそれこそが中国側の狙いだと言う。

「起こりうるとすれば、尖閣上空の領空域に入った自衛隊機に対し、中国側が挑発を仕掛けてくるようなケース。しかし日本がここで手を出そうものなら、中国は一気に乗じてくる。私ならば、『たとえ一番機が落とされても、こちらから先に撃ってはならない』と指示するだろう」

中国は事の重大さに気づいていない?

   前述の神浦氏は、中国にしてもこの領域での衝突を全面戦争にまで持っていく気はさすがにないだろう、と見る。しかし中国の「挑発」に、中国が思っている以上に憤慨している国がある。米国だ。

「2012年9月に、米国のパネッタ国防長官が日本、中国を訪れています。おそらく、この際に日中両国に、尖閣から100マイル(160キロ)以内に軍用機・艦艇を入れない、という合意を求めたのでは。ところが今回の発表と同時に、中国は尖閣から約40キロまで偵察機を接近させた。これには米国も怒っているはずです」

   そもそも米国も中国も「核」を保有している。両国が「偶発戦争」を起こした場合、それは一気に「核に火をつける」ことになりかねない。米国高官が一斉に中国批判の声明を出すなど厳しい態度を取っているのも、こうした背景があると神浦氏は推測する。

「事態の大きさに、中国は気づいていない。とんでもないことをやっている、という自覚がないんです。一方、米国は相手に『殴られて』黙っている国ではありませんから……」
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