2024年 4月 28日 (日)

「里山」は世界に誇れる優れた資本だ マネー資本主義一辺倒を見直そう
藻谷浩介氏に聞く「地方復興」への道

見過ごされた「日本の豊かな資本」を再評価する

――実は、地方の方が自立している部分もあると

藻谷 この本で舞台となっている中国山地の場合、「高速交通インフラの整備」や「工場団地の造成」「観光振興」という地域振興の「三種の神器」でも人口の大幅な減少を食い止められませんでした。市町村合併で公務員のリストラも進んでいます。都会のようにフリーターがふわふわと生きていける環境ではありません。それでも残っている人は、いわばそれでも何とか食べていける、何か自立した基盤を持っている人なのです。
   といっても高収入の職場があるわけではありません。先祖が田畑に培ってきた肥えた土と、豊かな水で農業をし、場合によっては放置されている山林の木々を燃料にして、生活費を下げて暮らしているわけです。しかしそうした生活をしている人、特に高齢者は、都会の同年代に比べて驚くほど元気なことが多いのです。日々育つ作物を見ていると、生きる力が出てくるのではないでしょうか。

――そういう指摘を聞くと、国土の多くを永久凍土や砂漠で占める他国に比べ、国土面積の約7割を森林が占める日本の豊かさが思い出されます

藻谷 「里山資本主義はウチの国ではできない」という国もあるでしょうね。彼らから見ればたいへんに恵まれた日本の住人が、「都会で国際競争を戦わなければならない」と総力戦を煽られて、多くの若者が消耗して少子化が進む要因になっているのは、おかしな話です。
   先ほどの「ブラック企業」との対比でいえば、「普通に真面目で、普通に根気のある人が、普通に手を抜きながら生きていける社会」が、日本の里山には残されていると思います。
   そういう里山の生活は、実は世界に通用するということに、多くの人に気づいて欲しい。里山に先祖が残した土や木が残っているうちに有効活用する道を探ってほしいし、自分の目で里山を見て、都会での生活の中においても、特定の田舎の産品を愛用して絆を深めるなり、家庭菜園を営むなり、数パーセントでも里山資本主義的な要素を取り入れてみてはどうかと思います。
   子育ての時期だけ、里山に済むという選択肢もあるかもしれません。都会に住まなくてもインターネットを使って、どこでも仕事ができる人も増えているはずです。それならば人口の重心も、もうちょっと里山に移ってもいいのではないでしょうか。
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