2024年 4月 29日 (月)

「里山」は世界に誇れる優れた資本だ マネー資本主義一辺倒を見直そう
藻谷浩介氏に聞く「地方復興」への道

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かつて人間が手を入れてきた休眠資産を再利用することで経済再生、コミュニティ復活を果たす「里山資本主義」
かつて人間が手を入れてきた休眠資産を再利用することで経済再生、コミュニティ復活を果たす「里山資本主義」

――確かに出生率は、地域によって偏りがあります

藻谷 2012年の「人口動態統計」によれば、合計特殊出生率の全国平均は1.41ですが、マネー資本主義の先頭を走る東京都が最下位で、1.09と断トツで低いです。2位は京都府の1.23で、北海道や埼玉県、神奈川県も下位を占めています。大阪府も41位です。
   一方、最も高いのは沖縄県で1.90。2位は島根県で、宮崎県、鹿児島県、長崎県と続きます。傾向として都市部の出生率は低く、地方では高いのですが、同じ地方でも北海道や東北地方は低く、九州や山陰、北陸地方は比較的高くなっています。
   給与水準は低くとも共働きで収入源が二本足になっている世帯が多いほど出生率は高いですし、「何やかんや言っても、豊かな実りを活かして生活を営んでいくことはできる」という自信がある地域かどうかも、影響があるように見えます。

――しかし、マネー資本主義に置き換わるシステムがすぐに見つかるとも思えないのですが

藻谷 本の中に明記しているように、「里山資本主義」とは、マネー資本主義を丸ごと置き換えようというようなものではありません。現代生活で、大なり小なりお金を使うのは当たり前です。ですがお金に依存しない里山資本主義の原理も、サブシステムとして暮らしに取り入れていこうというのがこの本の主張です。マネー資本主義だけの「1本足打法」は危険です。数割でも数パーセントでもいいので、お金に頼らず生きていく道も持っておこうということです。
   そもそも、人間が生きていくのに必要なのは、水と食料と燃料であって、お金はそれらを手に入れるための一手段でしかありません。そして、マネー資本主義の「規模の経済」から見放されたような日本の里山や離島にこそ、水と食料と燃料を相当程度までお金を払わずに手に入れている人たちが存在しています。そうした生活を支えているのが、菜園や井戸、耕作放棄地、山に生えている木など、マネー資本主義では無価値とされがちな里山の資源なのです。
   都会に住んでマネー資本主義にどっぷり浸かった人たちでも、そうした里山や離島と絆を持つことは可能ですし、気が向けば田舎に田畑を借りること、移り住むこともできる。日本にある豊かな資源を見直し、社会全体のバックアップとしてその資源を活用することで、安心・安全は増していくことでしょう。

――ただ、よく聞かれるのは「地方には仕事がない」という声です。「普通の家庭生活」が楽にできているのは、地方でも公共投資の恩恵を受けている一部の人ではないのですか

藻谷 最近の公共投資は多くの部分は地元には落ちず、ゼネコンや資材供給関係系など東京の大手企業に回っています。労働者も、大都市などのよそから臨時に働きに来る方が多い。東京こそ、アベノミクスの公共投資の乱発で食いつないでいる面があるのです。
   米価の維持政策が地方の農家を助けているという見方もありますが、大半の兼業農家では、コメからの収入は小遣い程度の額です。彼らは自分で作ったコメや野菜を自分でも消費して生活しているのですが、国民年金しかもらえなくても食べていける人が多いのはこれが理由です。
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