NHKの「クローズアップ現代」で放送された内容が、大きな反響を呼んでいる。10~20代のシングルマザーには貧困状態にある人が多く、住居や託児所といった生活支援を売りにする風俗店が事実上のセーフティネットとして機能していることを浮き彫りにした内容だ。これまで、この事実はほとんど知られてこなかったため、衝撃を受けた視聴者も多かったようだ。番組を通じて問題の根深さも明らかになった。番組では生活保護の受給を断念したことを背景に風俗店で勤務することになった女性のエピソードを紹介しているが、生活保護の申請を思いとどまらせようとする行政の対応は違法で「生活困窮者が活用できる制度について誤解を与える」といった指摘も出ている。20代シングルマザーの8割が「貧困状態」話題になっているのは、2014年1月27日に放送された「あしたが見えない ~深刻化する『若年女性』の貧困~」。番組では、高校卒業の女性の場合、48%しか正規の仕事に就くことができず、中でも20代のシングルマザーの約80%が年収114万円未満の貧困状態に置かれていることを指摘している。最近では風俗店が託児所と提携したり、自前で託児所を運営しているケースもあるという。番組に登場した風俗店では、2013年に従業員用の寮を新設。産後直後から働かざるを得なかったという21歳のシングルマザーの従業員は「私が頑張ったら託児所代が全部出ると思った」と話し、経営者は「(従業員に身寄りが)いても頼れない人が多い。家庭が崩壊しているケースも多い」と、従業員の生活基盤がもろいことを明かす。こういった事実は、これまでマスメディアではあまり報じられてこなかったこともあって、大きな反響を呼んでいる。J-CASTニュースの「テレビウォッチ」で番組内容を紹介した記事は100回以上ツイートされており、「これでは日本の将来が危ない」「日本経済を衰退させている原因は、実はこの現実」といった声も出ている。「水際作戦」批判しないと「生活保護利用できないと誤解する」ただ、番組が重要な点を見落としているという指摘も出ている。風俗業から一度は別の仕事をしていた女性が、再び風俗店の従業員になろうとするエピソードで、ナレーションでは、「生活保護を申請したが、『生活状況を細かく調べるのに時間がかかる』と言われ、断念した」と説明している。ところが、この女性はVTRでは、「市役所にいくら通っても『申請するまで2か月かかるよ、3か月かかるよ』って。待ってるわけにはいかないじゃないですか」と述べている。ナレーションでは申請は行われたと説明しているが、女性の発言を文字通り受け止めれば、申請することすら断念したように理解できる。ホームレスや生活困窮者に対する自立支援を行っているNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」のブログでは番組そのものは、「若年の単身女性やシングルマザーの貧困の実態を丁寧に描いた良質なドキュメンタリー」だと評価するものの、今回の女性のケースは、生活保護を申請しようとする人を福祉事務所が窓口で追い返す違法な「水際作戦」にあたるとみている。番組では、福祉事務所の対応が違法だとして批判することはなかった。そのため、「もやい」のブログでは、「そうした(編注:現に生活に困窮している人や、これから困窮する可能性がある)方々がこの番組を見た場合、『生活保護の申請に時間がかかる』という役所の説明を信じてしまい、生活に困窮しても生活保護制度は利用できないと誤解してしまうのではないでしょうか」と疑問を投げかけている。
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