2024年 4月 29日 (月)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
「官僚人事の季節」今夏の異変 政治主導で「重苦しい雰囲気」漂う

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   第186回国会(常会)が6月22日(2014年)に終了した。なんだかんだといっても、霞ヶ関官僚にとって、国会対応は大きな仕事である。かつては、某大臣が「この件は重要なので、政府委員(官僚)に答弁させます」と言ったことがあるが、幹部官僚にとって国会答弁は、上司である大臣の前で公式発言するわけで、それなりの緊張感がある。

   政府委員は、かつては広く課長級まで対象だったが、最近では局長級に限定されているようだ。国会対応事務は、答弁者だけでない、国会待機、答弁を書く課長補佐など広く動員される。

くだらない施策は「ガラクタ・コーナー」に書く

   ただ、この仕事はかなり定型的だ。国会待機は文字通り質問通告を待っていればいい。よく国会待機が大変だというが、筆者の場合は、管理職になる前も入省直後を除きほとんどやったことがない。「質問が入ったら、連絡してくれ」と言い残して、役所にはいなかった。答弁を書くのも楽だ。国会では重要なことを話さないから、答弁は水みたいなものと、先輩から教えてもらった。国会では議論にならないような、差し障りのない答弁を書くのが、官僚の仕事なのだ。

   国会と平行して、政府の各種審議会の報告書も、官僚にとって重要な仕事だ。例えば骨太方針。これに、いかに官僚にとってポイントになる(つまり、予算獲得できる)項目を入れられるかどうかは、その後の出世にも関わる。

   筆者は、官僚時代に経済財政諮問会議特命室(これは当時小泉政権の竹中平蔵大臣が作ったもので、今はない)にいて、各省から骨太に入れてくれと多数の陳情を受けた。はっきり言ってくだらないものが多かったが、それを入れないと官僚人生に関わると言われて、多くは書いた。ただ、それらは、「ガラクタ・コーナー」と内々で呼んでいた所に入れた。

   今年の骨太(と同時にでる骨太「別冊」になっている成長戦略と規制改革実施計画)は、中には岩盤規制のように良いものもあるが、「ガラクタ・コーナー」行きのものも少なくない。でも、霞ヶ関をその気にさせて、安倍政権もなかなか手の込んだことをしている。

官邸を意識せざるを得なくなった

   それでも、国会や骨太が終わると、仕事が終わったように官僚は感じる。残るは、人事である。どこの組織でも同じだが、人事は勤め人の一大関心事だ。

   この季節になると、何人か集まると人事話になるが、今年は少し様子が違う。今年(2014年)の国会で成立した国家公務員改革法で、内閣人事局が設置され、そこで、審議官級以上の600人程度の人事が、官邸主導で一括管理されることになったからだ。もちろん600人の一人一人まで口を挟むことはないが、人事権を握られているという重苦しい雰囲気がある。

   特に、内閣人事局の初代局長に官僚出身者がなると、新聞報道されていたが、菅義偉官房長官があっさり覆した。菅官房長官は、「政治主導といったでしょ」と涼しい顔だ。これで、霞が関官僚は、官邸を意識せざるを得なくなった。骨太などにあれだけ「霞ヶ関事項」が盛り込まれたのも、「仕事をした」というアピールに他ならない。

   実は、人事は内々定しているが、口外して新聞報道されたら差し替えになるので、みんなしゃべらない。マスコミはこの時期、人事報道をしたいがなかなか難しいわけだ。

   そうこうしているうちに、夏休みになる。人事の希望が叶った人もそうでない人も、ここで一休み。休み明けから、新体制で概算要求に奔走で、また動き出す。霞ヶ関の年中行事の一コマだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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