2024年 4月 27日 (土)

「日中偶発軍事衝突」は起こるのか(12・終)
政治は冷えても経済関係は悪くなっていない 日中は「政経分離」でいけばいい
キヤノングローバル戦略研究所・瀬口清之研究主幹に聞く

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現地の日本企業にとっては、経済環境はどんどん良くなっている

中央、地方政府が意図的に行う嫌がらせは10年と比べても多くはありません。反日感情が高まったので国民が自発的に不買運動を展開したり、車を焼いたりする行為もありましたが、それもほぼ3か月で収まりました。 13年には対中投資額が大きく落ちました。統計にはタイムラグがあるので14年も下降気味に見えますが、実際は13年秋以降回復していると言えます。

―― 13年末には安倍晋三首相が靖国神社を参拝し、中国政府が激しく反発しました。

瀬口: 日本企業が12年の尖閣の時に投資を止めたことは分かっていましたから、中国側は「投資が止まったら大変だ」という問題意識を持っています。日本企業に何とか中国への積極的な投資を続けてもらうために、「日本企業を守れ」という指令が出ました。デモは規制され、経済制裁もまったくなし。日本企業への被害はほぼゼロでした。政治関係がこれだけ悪化しているにもかかわらず、現地の日本企業にとっては、経済環境はどんどん良くなっています。これが政治と経済の大きなギャップです。12年は政治が悪くなると経済も悪くなりましたが、14年は政治が悪くなっても経済は悪くならない。「政経分離」の状態に近づいています。

―― 中国は、なぜ日本企業を守ってまで投資を呼び込みたいのでしょうか。

瀬口: その背景として中国側の問題があります。中国は足もとの経済は安定しています。雇用も強く、都市部の有効求人倍率も過去最高水準。物価も1990年代前半に市場経済化を始めて以来最も安定しています。マクロの経済政策として重要な雇用と物価は安定している。でも、先行きを見ると不安材料があります。それが輸出です。10年から伸び率が下がり続けており、このままいくと貿易黒字が赤字に転落する可能性がある。ブラジル、インドネシア、インドなど新興国が軒並み経常赤字に転落しており、これらの国は「通貨が弱くなる→輸入インフレが起こる→それを防ぐために金利を上げる→景気が悪くなる」というパターンをたどっています、これを中国は懸念しています。

   中国がまだこの状態になっていない最大の理由が、「輸出競争力が強いから」。これを維持するには、世界最高水準の技術力を持つ日本の企業に何としても投資を続けてほしい。日本企業は他国企業と比べても圧倒的にプレゼンスが大きいですから「何としても日本を守れ」というのが中国のスタンスです。

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