2018年 11月 21日 (水)

負傷の羽生選手、周囲が棄権させるべきだった? 為末大らスポーツ関係者らからも訴え

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   2014年11月8日のフィギュアスケートグランプリシリーズ中国杯で、ソチ五輪金メダリストの羽生結弦選手(19)は、演技前のアクシデントで負傷するも自らの意志で再びリンクに立ち、満身創痍でフリー演技を終えた。

   鬼気迫る滑りは見る者の心を揺さぶった。しかし、脳振とうの疑いがあり、「棄権させるべきだったのでは」という声が相次いでいる。

コーチ「身体が一番大事なんだぞ」と強調

9日のエキシビションは欠場し、日本で精密検査を受けると報じられている(2014年4月撮影)
9日のエキシビションは欠場し、日本で精密検査を受けると報じられている(2014年4月撮影)

   アクシデントは男子フリー最終組の6分間練習中に発生した。スピードに乗った羽生選手が後ろ向きの滑走から前を向いた瞬間、中国のエン・カン選手と正面衝突。観客の悲鳴とともに2人は倒れ込んだ。顔面を激しく打ちつけてしまった羽生選手はなかなか起き上がれず、リンクに仰向けになったまま動けなくなった。

   救護スタッフに支えられながらリンクを去った羽生選手の頭部とあごからは血が流れていた。それでも羽生選手は頭に肌色の包帯を巻き、目に涙を浮かべながら再びリンクサイドに現れた。コーチのブライアン・オーサー氏の「もしここでリンクに上るのであれば落ち着いてゆっくりやりなさい。身体が一番だぞ」という言葉に頷き、公式練習を再開した。

   オーサー氏は「きみにしか状態は分からない。ヒーローになる必要はないんだ。身体が一番大事なんだぞ」と強調するも、羽生選手の出場の意志は固かった。本番は転倒を繰り返しながらも最後まで滑りきり、合計237.55点で2位に入った。報道などによれば、オーサー氏は終了後の会見で「羽生の意志はとても強かった。脳振とうなどの症状がないかを注意深く見て判断した」などと語ったという。

   驚異的な精神力でアクシデントを乗り越えた羽生選手の演技に、見守っていたファンたちからは「感動をありがとう」「泣いてしまった」といった声があがった。一方で、「棄権してほしかった」という声も多々出ている。

   テレビ朝日の中継番組にメーンキャスターとして出演していた松岡修造氏も「個人的な願いですが、はっきり言って滑るべきではないと思います」「アスリートとして本当にやめてほしいです」と主張した。

「選手を命の危険から守るのが競技会側とメディア」

   スポーツ界からは「周囲が棄権させるべきだった」という指摘も複数出ている。特に言及されているのが「脳振とう」の影響だ。

   脳振とうは脳が急激に揺れ動かされて起こるもので、一時的な意識喪失や記憶喪失のほか、めまい、ふらつき、頭痛、吐気など、さまざまな症状が現れる。相手選手との接触が多く、脳振とうを起こしやすいスポーツ(サッカーやラグビー、柔道)ではガイドラインや判断基準を設けている。

   バルセロナ五輪柔道銀メダリストの溝口紀子さん(43)は8日、ツイッターで「羽生選手、脳震盪起こしていないでしょうか?柔道やラグビーでは本人の意志があっても脳震盪がある場合は試合にでれません」と言及。9日には、

「羽生選手や中国選手が負傷しながら特に脳震盪の可能性があるのに、指導者や連盟は、本人の意志を尊重し、出場させたというのは言い訳。脳の加速損傷やセカンドインパクト事故を知らないからこそ無責任にいえること」

   と指導陣や日本スケート連盟の対応を問題視した。その上で「これはもはやスケート界だけでなくスポーツ界全体で脳震盪ガイドラインを徹底すべき」と訴えている。

   元400メートルハードル日本代表の為末大さん(36)も8日、「メディカルチェックしたんだろうか」とツイート後、脳振とうに関するページを紹介。

   「気持ちの強い選手はどんな状況でもいくらでも頑張ろうとするわけだから、選手を命の危険から守るのが競技会側とメディアだと思う」と指摘し、「まずは検査して安静にするように運営側が対応してほしい。それから検査の結果どうだったかを教えてほしい。その上でできればこういう場合の正しい対応の仕方も報道して欲しい」と求めた。

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