2024年 4月 26日 (金)

解雇規制を緩和する「解決金制度」が動き出した 「金を払えばクビにできる」のか

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米国が要求

   金銭解雇導入論の背景には、現実には裁判後に職場に復帰するより、金銭補償による和解で解決しているケースが多いとみられることがある。そのルールが不明確なため、解決までに時間がかかることも多いとされる。規制改革会議の岡素之議長(住友商事相談役)は「(解雇トラブルを)できるだけ早期に解決する。働き手に納得してもらえる解決の仕方を実現すべきだ」と、提言の狙いを説明する。

   解雇を巡る紛争解決には、訴訟以外に労働審判、労働局のあっせんによる金銭の支払いもあり、「解決までの期間や金額にばらつきがあり、先行きを見通しにくい」(規制改革会議関係者)。金銭解雇のルールができれば、労使双方に費用や事務負担がかかる裁判を回避できるようになり、迅速な解決が期待できる。また、一般に、労働審判などは裁判より安い解決金で決着することが多いので、金銭解雇で解決金の水準が明確になり、裁判を起こす余裕がなくて安い解決金で泣き寝入りしてきた労働者にとってメリットがあるはずだ。

   ただ、金銭解決が多いという現状は、裏を返せば、労働者が裁判で不当解雇だと認められ、職場に戻る道が開かれたはずなのに、実際には、企業側が職場復帰を拒んで、結果として金銭で解決している場合が多くともいえる。このため、金銭解雇がルール化されれば、職場復帰への道がいよいよ遠のく恐れもある。

   実は、こうした解雇規制緩和は、従来から米国も要求してきた。在日米商工会議所(ACCJ)は幾度もこれを要求、2014年2月に出した提言「アベノミクスの三本の矢と対日直接投資:成長に向けた新たな航路への舵取り」でも「労働流動性」の項目で、雇用契約と解雇について一層の柔軟性と透明性確保を求め、「具体的な提言例」として、合法的に解雇できる場合の基準を明確化することともに、「十分に正当な理由を欠く解雇において、原職復帰に代わる金銭的補償制度を導入する」と明記している。まさに、規制改革会議での議論を先取りする内容だ。

   外資系企業で「ロックアウト解雇」と呼ばれる問答無用の解雇が一部で問題化し、また日本企業を含めて「隔離部屋」による退職強要なども後を絶たないように、現行法制でもトラブルが絶えないだけに、「いずれ経営者からの申し出でも金銭解雇が認められるようになるのではないか」という労働側の警戒心は簡単には解けない。また、解決金の水準が低く設定されれば、金銭面での救済が不十分なまま安易な解雇が広がる恐れがある。このほか、解雇された後の生活保障をどうするか、職業訓練をいかに充実させるかなどの課題も多い。

   厚労省は検討会を設けて制度化について議論を進める方針というが、功罪両面が考えられるだけに、慎重に検討する必要がある。

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