2024年 4月 30日 (火)

「パナマ文書」日本の報道がばらつく 「節税」「脱税」「租税回避」の違いは?

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   国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が明らかにした「パナマ文書」。2016年5月10日未明には、ホームページでパナマや英領バージン諸島など世界21か所のタックスヘイブン(租税回避地)に設立された約21万社を超えるペーパーカンパニーに関する情報を公開するなど、追及の手を緩めない。

   一方、日本の大手メディアは、パナマ文書の報道でばらつきが目立つ。租税回避が違法なのかどうか、また、脱税なのか節税なのか、についてのスタンスに差があるようなのだ。

  • タックスヘイブンは「節税」なのか、「脱税」なのか・・・
    タックスヘイブンは「節税」なのか、「脱税」なのか・・・
  • タックスヘイブンは「節税」なのか、「脱税」なのか・・・

「現時点では匿名で報道します」

   国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は、パナマをはじめ、世界21カ所のタックスヘイブン(租税回避地)に設立された約21万4000社の法人と、関連する約36万の企業や個人の氏名や住所のデータベースをホームページ上で公開。この中には、日本に関連するとみられる個人や法人名も約600件含まれていたとされる。

   日本でもこれまで、ペーパーカンパニーの株主や役員として、楽天の三木谷浩史会長兼社長やUCCホールディングスの上島豪太最高経営責任者(CEO)、セコムやソフトバンク、伊藤忠商事や丸紅、三菱商事といった大手商社、ファーストリテイリング、金融機関や学習塾大手などの名前が取りざたされている。

   2016年5月10日は多くの上場企業の決算発表と重なったため、「パナマ文書」に名前が記載されていた企業では、記者会見で説明を求められるケースもあった。いずれも「適切に納税している」などとして違法性を否定している。ソフトバンクグループは孫正義社長も「名前が出てきて、わたしも驚いた」と話した。

   同社は、ソフトバンクBB(2015年にソフトバンクに吸収合併)などの名前がパナマ文書に記載されていた。孫社長は、英領バージン諸島に中国企業との合弁会社を設立していたことを認めたが、「租税回避のためではなく、ビジネス上の理由で投資した」と説明。その合弁会社は2011年に撤退したという。

   こうした「パナマ文書」に関する報道が続々と発信されるなか、各メディアの報道には表現の差があるようだ。

   日本テレビ系(NNN)はソフトバンクの記者会見のもようを、2016年5月10日深夜のニュースで「『パナマ文書』孫正義社長、節税目的を否定」と報じていた。10日付夕刊や11日付朝刊の新聞各紙の見出しをみても、日本経済新聞は「節税網 世界に拡大」と「節税」と表現した。

   これに対して、朝日新聞や毎日新聞は「租税回避」と表現。毎日新聞は7面の見出しで「課税逃れ」としていた。産経新聞も「税逃れ」を使った。

   一方、読売新聞は「租税回避」と表現し、「タックスヘイブン」の説明には「課税逃れ」と表記していたが、「パナマ文書」に記載されていた企業名、個人名については「原則、匿名で報道します」との「おことわり」を10日付け夕刊に掲載した。各国の税制が異なっているため、タックスヘイブンを利用していても税法上、問題視することはできない、と理由を説明。ただ、公職の個人や公共団体は道義上、実名とし、企業なども脱税などの違法行為があれば実名にすると説明した。

交錯する擁護と批判の声

   そもそも、ビジネスや金融取引のため、税負担が軽減されるタックスヘイブン(租税回避地)での法人の設立は違法ではない。ただ、実態がつかみにくく、タックスヘイブンがマネーロンダリング(資金洗浄)や資産隠し、不正な蓄財などに悪用されている可能性は否定できない。

   合法とはいえ、政治家を含め、富裕層や企業の経営者らが国外のタックスヘイブンを使って節税することに、税負担の「不公平感」を募らせる人は少なくない。

   各メディアの報道に、「節税」「脱税」「租税回避」といった似通った言葉が使われていることからも、メディアが「違法でないものを、どのように追及すべきか」苦労しているようすがうかがえる。

   インターネットでも、

「合法的に節税しているのだから、問題なし」
「お前らは増税前にモノを買うのも『脱税だ。許せない』っていうの? 違うでしょ。それと同じ」
「犯罪じゃないが、問題はある」
「カネ持ちがみんなで渡れば怖くないっていうモラルハザード」
「法人税減税とか、もうしなくていいよねって話だよね」
「名前のあった企業を一括りに悪者扱いすることはできないが、タックスヘイブンは問題ありだろ」

といった、擁護する声と批判の声が交錯する。

   ちなみに、「節税」や「脱税」、「租税回避」も「納める税金を減らしたい」という目的は同じだ。ただ、節税は法律に定められた方法にそって納税分を減額したり、税金の免除を受けたりすることをいう。法人税や所得税を確定申告して承認後に還付金を受けるのは、節税にあたる。

   一方、脱税は、ウソや不正行為によって、不当に税負担を減らしたり免れたりすることをいう。違法行為にあたる、「ブラック」な行為だ。

   問題になっている「租税回避」は、租税の課税を免れるために、その租税の範囲内で納税分を減額することをいう。たとえば、酒税の負担を減らすためにビールメーカーが「発泡酒」や「第3のビール」を開発したのは、租税回避にあたる。しかし、その手段によって違法かどうか判断が分かれる場合がある。

   「タックスヘイブン」の利用も、合法的な節税なのか、違法な脱税なのか、「グレーゾーン」ということのようだ。

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