2024年 4月 27日 (土)

O型はがんや心臓病になりにくいってホント?

   しっかり者のA型、無責任なB型......。かつては、血液型の性格判断がはやったが、すっかり「えせ科学」扱いされている。最近は、本物の科学で血液型によってなりやすい病気、なりにくい病気がわかってきた。

   それによると、O型人間ががんや糖尿病になりにくいというのだが......。

  • O型のご先祖様は、とにかくたくましかったようで(イラスト・サカタルージ)
    O型のご先祖様は、とにかくたくましかったようで(イラスト・サカタルージ)
  • O型のご先祖様は、とにかくたくましかったようで(イラスト・サカタルージ)

ほとんどの病気で有利なO型、不利なAB型

   血液型と病気の発症リスクとの関連を初めて本格的に調べた研究は、2009年に米国立がん研究所が発表した「O型の人はA、B、AB型の人に比べ、すい臓がんになりにくい」という論文。約10万人の男女を8年間追跡調査、期間中に発症したすい臓がんの人々を、飲酒、喫煙、年齢、遺伝など他の要素を除外したうえで、血液型との関連を分析した結果、O型の発症リスクが一番低いことがわかった。そして、他の血液型のなりやすさはO型に比べ、B型は約1.7倍、AB型は約1.5倍、A型は約1.3倍だったという。

   この研究は世界に衝撃を与えた。それ以降、相次いで血液型と病気の発症リスクを関連づける研究が発表されている。以下、主な病気との関係を列挙すると(カッコ内は論文発表年と研究機関)。

   (1)心臓病:約9万人の男女を約20年間調査。心筋梗塞や狭心症の発症リスクはO型が一番低い。O型に比べ、他の血液型の発症リスクはAB型が20%増、B型が11%増、A型が8%増だった(2012年・米ハーバード大学)。

   (2)心血管疾患と胃がん:すべての病気の死亡率との関連を調べるため約5万人の男女を約7年間追跡。その結果、特に心血管疾患で差が大きく、O型は他の血液型に比べ、心血管疾患で死ぬリスクが15%低い。また総死亡率(早死するリスク)が9%低い。すべてのがんの発症率では、特に胃がんの差が顕著で、O型は他の血液型よりも55%低かった(2015年・米国立衛生健康研究所)。

   (3)前立腺がん:前立腺除去手術を受けた前立腺がん患者555人を約4年間追跡調査。再発するリスクはO型が一番低く、一番高いA型に比べ35%低かった(2014年・東京医科大学)。

   (4)糖尿病:約6万2000人の女性を約18年間追跡調査。糖尿病の発症率はO型が一番低い。O型に比べ、他の血液型の発症リスクはB型が21%増、AB型が17%増、A型が10%増だった(2014年・フランス国立保健医学研究所)。

   (5)認知症:約3万人の男女を3年半追跡。軽度認知症を発症するリスクはAB型が特に高く、他のO・A・B型の平均に比べ、82%増だった。他の3つの型の間では目立った差は見られなかった(2014年・米バーモント大学)。

   (6)肺塞栓症(エコノミークラス症候群):約1360万人の献血者を調査した結果、O型に比べ、A・B・AB型の肺塞栓症の発症率は1.8倍高かった(2016年・スウェーデン・カロリンスカ研究所)。

マラリアへの抵抗力が世界の血液型分布を決めた

   (7)マラリア:ABOという血液型の分布が国によって異なり、特にアフリカ、東南アジア、中南米など熱帯地域の人々にO型が多い。いずれもマラリアの脅威のある地域で、O型が重症のマラリアにかかりにくいからだ。その理由を研究した結果、マラリア原虫が「RIFIN」というタンパク質を分泌、これが赤血球の表面に付着して接着剤の役目を果たすことがわかった。

   「RIFIN」はA型の赤血球の表面には強く結合するが、O型とは結合が弱いため、マラリアの多い地域にO型が生き残り、人口比が高くなった(2015年・スウェーデン・カロリンスカ研究所)。

   以上の結果をみると、O型ばかり得をして、AB型が損をしているように思われるが、どうして病気の発症と血液型が関係してくるのか。免疫学者の藤田紘一郎・東京医科歯科大学名誉教授の著作『血液型の科学』などによると、こういうことのようだ。

   もともと血液型によって免疫力が違う。外部からの異物(ウイルスや細菌)と戦う抗体はリンパ球で作られるが、白血球の中のリンパ球の割合が血液型によって異なる。O型39%、B型37%、A型36%、AB型34%。つまり、O型が最も病気に強く、AB型が最も弱いことになる。

   これは進化の過程で血液型が分かれてきたためだ。人間の先祖は最初O型だった。やがて農耕生活に入り、穀物や野菜を食べるようになると、それらを消化できるよう腸内細菌が変化し、A型人間が登場。牧畜を始めると乳製品を消化できるようB型人間が誕生、最後にAB型が現れた。O型は人間の「基本形」だけに、何でも食べた頃のたくましい免疫力を残しているらしい。

同じ染色体上にある血液型遺伝子とコレステロール遺伝子

   また、最近、血液型を決める遺伝子は、血中コレステロールを調整する一部の遺伝子と同じ染色体上にあることが判明した。特にO型の場合は、血液型をOに決める酵素が、同時に心筋梗塞を予防する働きに関連していることもわかった。一方、(1)で紹介した米ハーバード大学の研究によると、A型は悪玉コレステロール値が高くなり、AB型は心筋梗塞につながる血管の炎症になりやすいことが指摘されている。もともと、O型は「血液サラサラ」、A型やAB型は「血液ドロドロ」になりやすい傾向があるようだ。

   とはいえ、自分の血液型を単純に喜んだり、ガッカリしたりするのは禁物。ハーバード大学で研究を行なったルー・チー博士はこうコメントしている。

「自分の血液型のリスクが高いことを知ると、病気予防に留意するきっかけになります。血液型が何型であろうと、喫煙、肥満、運動不足、高コレステロールなどの悪い生活習慣より危険な因子はありません。自分の血液型を変えることはできませんが、生活スタイルは変えることができます」
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