2019年 1月 16日 (水)

編集長からの手紙
「田中角栄」はやっぱり死んでいない ロッキード事件から40年

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   「田中角栄は死なず」。これは筆者が40年前の1976年11月に出版した書籍のタイトルだ。田中角栄元首相は同年7月に東京地検特捜部に逮捕され、8月には受託収賄と外為法違反の疑いで起訴された。「黒い政治家」として世間の袋叩きにあっている時期だった。

   しかし、12月の総選挙では、自民党は敗北したが、田中元首相は16万8千余票で堂々のトップ当選。以後の選挙でも、元首相は病気で倒れるまでトップ当選を譲ることはなかった。なぜなのか。

  • 田中角栄が逮捕された1976年に出版した著書「田中角栄は死なず」
    田中角栄が逮捕された1976年に出版した著書「田中角栄は死なず」

中央権力に立ち向かった「義賊」の幻想

   筆者はその前の2年間、元首相の金城湯池の選挙区新潟3区に住んで取材した結果が、著書のタイトルだった。30万部売れた。本の最後はこう締めくくった。

≪かつて中央権力に立ち向かった義賊として、中央官僚の批判として、「田中角栄」の幻想は生き続けるだろう≫

   あれから40年。2016年は、テレビや雑誌で田中角栄元首相に関する多くの特集が組まれた。書籍では、石原慎太郎氏らの著書がベストセラーとなり、他にも多くの角栄本が出版され、角栄神話は復活した感がある。共通しているのは、今の政治家に比べて、「情がある」「面倒見が良い」「弱い者の味方」「決める政治家」である。いまの政治、社会への不満を表わしている。

   元首相は日本海側(裏日本と呼ばれた)の権利を主張していた。陽の当たらない新潟の山村に予算をぶんどってくる。それこそが政治ではないか、何が悪いのだと叫んでいた。上越新幹線を新潟に延ばし、関越自動車道を走らせ、道路建設、圃場整備、河川改修などに多くの予算をつけた。

   越山会査定という仕組みがあった。元首相の後援会「越山会」が選挙区内の補助金予算を調整、元首相を通じて中央官庁に出す。調整役は、越山会の国家老と呼ばれる本間幸一氏だった。選挙民が決めた予算を役所に実現させる。本来役所が公正に仕切るべきところだが、元首相の力で驚くべき慣習が続いていた。選挙民はその代りに元首相へ票を出した。票はその数量でなく、地域が元首相へ出した票の比率が評価された。小さな村でも、田中票比率が高い地域は優遇された。面白い民主主義である。

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