2018年 9月 20日 (木)

発達障害の人が見る・聞く驚きの世界 最新科学と当事者が明かす向き合う方法(前編)

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【NHKスペシャル 発達障害大特集】(NHK)2017年5月21日放送
発達障害 解明される未知の世界

   小中学生の15人に1人と言われる「発達障害」。最新の脳科学研究や当事者への聞き取りにより、発達障害の人は生まれつき、独特の「世界の見え方・聞こえ方」をしているケースが多いことがわかってきた。多くの人にとって何でもない日常空間が、耐えられないほどまぶしく見えたり、小さな物音が大音量に聞こえたりしてパニックに陥るのだ。 番組では、当事者の感覚・認知の世界をNHKならではの技術で映像化。誤解されてきた行動の裏にある「本当の理由」に迫り、これまでわかってもらえなかった当事者の思いを生放送で発信した。「前・中・後編」の3回に分けて伝える。前編では「自閉スペクトラム症」の人の独特の世界の見え方を紹介する。

  • 家族が理解してあげよう
    家族が理解してあげよう

まぶしすぎて目に痛い「真っ白な世界」

   番組では冒頭、MCの有働由美子アナが「発達障害」の3つのグループについて説明した。

有働アナ「まず1つはASD(自閉スペクトラム症)の人がいます。『コミュニケーションが苦手』や『こだわりが強い』という特徴を持ちます。アスペルガーや自閉症もASDに含まれます。2つ目はADHD(注意欠如・多動性症)の人です。『不注意』や『落ち着きがない』という特徴を持ちます。そして3つ目がLD(学習障害)の人です。『読み書きや計算といった特定の分野が極端に苦手』という特徴を持ちます。それぞれが単独ではなく、重なっている人もいます」
MCの井ノ原快彦「発達障害の子が15人に1人というと、クラスに2~3人はいることになりますね。けっこう身近ですね」

   ここ数年、発達障害の人は独特の世界を見ていることが研究でわかってきた。それは、子どもだけと思われていた発達障害が大人にもあり、当事者の大人が自分のが見える世界を「言葉」で表現するようになったからだ。情報通信研究機構の長井志江・主任研究員は大人の自閉スペクトラム症の当事者22人から聞き取り調査を行い、どんな風に世界が見えているか、映像VTRを作った。

   番組では、その驚きの映像を公開した。晴れた日の街頭。太陽がまぶしすぎて、画面全体が真っ白だ。人々が黒い影になり、ゆらゆらと陽炎(かげろう)のように揺れている。人間の顔は白く飛んで、目鼻立ちがわからない。駅のホームに入ってくる電車は、色がなくなり、白黒映像になっている。空中には粉雪のような光の粒々(つぶつぶ)が舞っている......。この映像制作に協力した20代の自閉スペクトラム症の女性が語った。

20代女性「昼間外に出ると、白っぽく見えて目が痛いです。夜も車や自転車のライトが痛いです。子どもの頃から色とりどりのものが見えていて、親に言っても、『気のせいだよ』と相手にされませんでした」

音の洪水で、目の前の有働アナが「口パク」に見える

   このように、感覚に過敏なのが自閉スペクトラム症の特徴だ。光だけでなく、音、味、触覚、すべてに対して――。有働アナは、自閉スペクトラム症の定時制高校3年生・素子さん(18)の自宅を訪ねた。昼間というのに部屋中のカーテンを閉め切って、薄暗い。

素子さん「この暗さが楽です。開けるとまぶしくてツライです」

   素子さんと有働アナは外に出て、スーパーに入った。「店内に色々な音が響いている」と素子さんは言い、商品の陳列台や床、天井を指さした。「えっ、何が聞こえるの? まったく聞こえないけど」と有働アナは周囲に耳をそばだてる。

素子さん「キーン、シャー、ゴーという音です。天井の蛍光灯や陳列台の奥の冷蔵庫の音です。音の洪水で疲れます。店の中にいるのは15分と持ちません」

   次に2人は喫茶店に入った。数人のママ友たちのお喋りでざわついている。2人は会話を始めたが、素子さんは辛そうな表情。ここで番組は、素子さんの視点から見た、そして聞えた有働アナとの会話をVTR映像で再現した。「素子さん、私の話が聞こえますか?」という有働アナの声と、後ろの方の座席にいるママたちのお喋りの声が同じ大きさに聞こえる。また、外からゴー、ゴーという自動車の音が響いてくる。店内のBGMの音楽もやかましい。このため、目の前の有働アナが口パクをしているように見える。何か喋っているのだが、内容が全然聞こえてこない。

発達障害の人の買い物に「クワイエットアワー」

   どうしてこんな症状が起こるのか。番組スタッフは英国へ飛んだ。発達障害研究の第一人者、ロンドン大学のフランチェスカ・ハッペ教授がこう解説した。

「脳が出す指令と関係しています。多くの人は周囲の音を聞き続けると次第に気にならなくなります。『慣れ』が生じるからです。脳の司令塔が指示を出し、不要な音が聞こえる音量のレベルを下げ、聞きたい音だけが聞こえるようにします。ところが、自閉スペクトラム症の人は司令塔がうまく働かず、すべての音が高いレベルのままに聞こえるのです。台所で食器を洗う音は誰も気をの留めなくなりますが、自閉スペクトラム症の人にとっては常に新しい、大きな音に聞こえます。だから、話し相手に注意を向けられないのです。彼らにとって、世界はあまりに情報(光、音...)が多すぎて、脳が混乱状態に陥っているのです」

   だから、自閉スペクトラム症をはじめ発達障害の人は、なかなか外に出たがらない。そんな人々に向けた取り組みが英国各地で始まっている。ロンドンのあちこちの商店街では、週に1度、各店が一斉に店内の音や照明を1~2時間消す試みが行なわれている。「クワイエットアワー」(静かな時間)と呼ばれる。発達障害の人がショッピングをしやすくするのだ。これは店側にとっても利益になる。暗い店の中で、あるスーパー店主はこう語った。

「クワイエットアワーの日は、ほかの日より1割売り上げが伸びます」
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