宮里藍の引退発表は驚きでしかなかった。スーパースターが消える女子ゴルフ界は大変である。「これ以上ないゴルフ人生でした」「モチベーションの維持が難しくなった」引退会見(2017年5月29日)で宮里は理由をそう語った。その内容はトップ選手でしか分からないものだった。国内ツアー15勝、米ツアー9勝。高く評価したいのは、10年に世界ランキング1位にランクされたことである。今から考えると、この頂点に立ったことが彼女を苦しめることになったといえる。つまり、世界のトッププロとしての目標はメジャー優勝と言い聞かせ、努力を重ねたが、現実とのギャップを身をもって知った。「(自分が)理想としている姿はそこになかった」そう吐露した宮崎は155㌢と小柄。外国人選手の多くはパワーヒッターが多く、飛距離でどうしても及ばない。距離を出すためにスイングを大きくしたこともあった。「これ以上ないゴルフ人生でした」昨年あたりから引退をほのめかしていたという女子選手の証言があったが、31歳の今年、完全に吹っ切れたようである。宮里はスーパースターである。ファンの支持はなまじではない。いつのときもスーパースターが消えるときはぽっかり穴が空いたようで、一つの時代が終わったことを実感する。スーパースターの引退の言葉これまで各界のスーパースターが辞めたとき、みんな気が抜けたような状態になった。 「我が巨人軍は永久に不滅です」 このセリフはミスタープロ野球こと長嶋茂雄が引退したときに夕闇のグラウンドで語ったものである。引退理由は宮里と同じ意味のことを全国のファンに伝えている。 世界記録の868本塁打を放った王貞治もそうだった。 「ファンが期待している王貞治のバッティングができなくなった」 最後のシーズンは30本塁打を打っていながら、である。 「力の限界」 涙をこらえて一気に言葉を発したのは大相撲の横綱千代の富士だった。 超一流選手は重荷を背負っているのだ。宮里の言葉を聞いていると、やはりつらかったのだろうと思う。スケートの浅田真央もそうだったはずだ。 スーパースターの大きな条件の一つの観客動員がある。宮里は05年の日本女子オープンで4日間、4万8677人を集めた。この記録は依然として最多記録となっている。長嶋も王も千代の富士も大勢の客を呼んだ。 女子ゴルフ界はこれから大変だろう。なにしろ米ツアーでもっとも模範的な選手に贈られる賞(12年)に輝いた選手である。とんでもない課題をゴルフ界は突きつけられた。(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)
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