2024年 4月 18日 (木)

包茎の「皮」がHIV感染の温床になる 切除手術でリスク低下する可能性

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   男性ならではの下半身にまつわるコンプレックスと言えば包茎だろう。勃起時に包皮がむける仮性包茎であれば手術は必要ないとされているが、エイズウイルス(HIV)感染予防の観点からは、どのような状態であれ包皮切除手術をしたほうがいいのかもしれない。

   2017年7月23~26日に仏パリで開催された国際エイズ学会(IAS)年次総会で、米国立衛生研究所(NIH)や米ワシントン大学の共同研究チームが、包茎の男性の陰茎に存在する特定の細菌がHIV感染リスクを最大で63%も高めているとする研究結果を発表したのだ。

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割礼の有無で細菌の数に10倍の差

   HIVに感染すると免疫細胞が破壊されて「後天性免疫不全症候群」、つまりエイズを発症する。

   免疫機能が大幅に低下し感染症にかかりやすくなるが、かつてのように不治の病ではない。早期に適切な治療を開始すれば、余命は非感染者と同程度とする研究結果が2017年5月に英ブリストル大学によって発表されている。

   とはいえ深刻な病気であることに変わりはなく、治療はもちろん予防が重要だ。世界保健機関(WHO)がウェブサイト上などで公開しているHIVガイドラインでは、最も基本的な予防法は「コンドームなどの避妊具を使用したセーフティーセックス」とされているが、包茎手術が有効ではないかという指摘も以前から存在する。

   WHOでは、アフリカで割礼(宗教上などの動機による包皮切除)を行う習慣のある部族とない部族の男性を比較した調査の結果から、習慣ありの部族のHIV感染率が50%近く低下していることを確認しており、前述のガイドライン中で包皮切除に効果がある可能性を認めている。

   ただ、これまではなぜ包皮切除によって感染リスクが低下するのか、その詳しい理由がわかっていなかった。そこでNIHとワシントン大の研究チームは、HIV感染者数や死亡者数が多いアフリカのウガンダで、15~49歳の割礼を受けていない(包皮を切除していない)男性182人、割礼をしている男性136人を対象に、陰茎に繁殖する細菌を収集。2年間の追跡調査を行っている。

   2年間の間に割礼を受けていない男性の46名がHIVで死亡したが、この男性たちの細菌と割礼をしている男性の細菌を比較したところ、酸素を嫌う「嫌気性細菌」という細菌の数が割礼を受けていない男性では10倍近く多くなっており、この細菌の量が多くなるほどHIV感染リスクが54~63%上昇していることも確認された。詳しく分析してみると、嫌気性細菌がHIVを引き寄せる物質を分泌していることもわかったという。

コンドームほか複数の予防手段との併用を

   この結果から、研究チームは生殖器上の嫌気性細菌の量を減らせばHIV感染を抑えられる可能性があるとし、薬剤を利用した除菌のほかに包皮切除も有効な手段になると結論づけた。

   ただし研究チームは論文の中で、いくつかの注意点を挙げている。まず、今回の研究で包皮切除の効果を確認したのは、対象とした「異性愛者の男性においてHIV感染率が大幅に増加している」という環境に限られる。そうではない状況では調査をしていないため、包皮切除による効果の有無は不明だ。

   日本の場合、厚生労働省エイズ動向委員会による2016年の調査報告を見ると、1990年代に比べればHIV感染者数は増加しているものの、ここ数年は横ばい。感染経路は「同性間の性的接触」が7割近くを占めている。世界のHIV患者の6割近くが存在するアフリカとは状況がかなり異なると言える。

   また、包皮切除が絶対的な予防法になるわけではない。研究チームも「コンドームなど複数の予防手段と併用することでより効果を高める可能性があるもののひとつ」と位置付けている。

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