電柱なくそう団体の写真コンテスト 美しい電柱風景の作品投稿が殺到し論争

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   見上げた先には、真っ青な空。立ち上がる大きな白い雲。そしてそれに交差するように伸びる、電柱と電線――。

   何気ない一コマを切り取った写真だが、空の青と雲の白、そして電柱の黒のコントラストが、夏のまぶしさを感じさせる。撮影者の「ウイングバック」さんは、「電柱があるからこそ、日本の夏なのよ」という一言を、この写真に添えている。

  • 「低浮上中」(@Tettou_140423)さんが投稿した電柱風景の写真。取材に対し、無電柱化には反対しないとしつつ、「見る方、撮る方の感性を否定することに疑問をもっただけです」とした
    「低浮上中」(@Tettou_140423)さんが投稿した電柱風景の写真。取材に対し、無電柱化には反対しないとしつつ、「見る方、撮る方の感性を否定することに疑問をもっただけです」とした
  • 「tokyopasserby」(@tokyopasserby)さんの投稿した写真。夕暮れの街に、電柱と鉄塔がそびえる
    「tokyopasserby」(@tokyopasserby)さんの投稿した写真。夕暮れの街に、電柱と鉄塔がそびえる
  • 「ウイングバック」(@wingback_t)さんの投稿した写真。「『醜い風景を撮影して投稿する』という趣旨が、ある一定の価値観をもって企画されており、日本の風景を否定するものであるため」と投稿理由を語る
    「ウイングバック」(@wingback_t)さんの投稿した写真。「『醜い風景を撮影して投稿する』という趣旨が、ある一定の価値観をもって企画されており、日本の風景を否定するものであるため」と投稿理由を語る
  • 「tokyopasserby」(@tokyopasserby)さんの写真。三日月と電線のコントラスト
    「tokyopasserby」(@tokyopasserby)さんの写真。三日月と電線のコントラスト

邪魔な写真を募集のはずが...

   あるいは、夕焼けの小さな通り。林立する電柱と、蜘蛛の巣のように張り巡らされた電線。その奥で、オレンジ色の空をバックにそびえる鉄塔。はたまた、暮れゆく空に浮かぶ三日月と電柱のシルエット。電線の下に続く街。

   こうした風景を、「雑然」と言ってしまえばそれまでだ。だが、不思議と懐かしい気持ちになる人は多いだろう。電柱への思い入れを感じさせるこれらの写真が応募されたのはしかし、「無電柱化」を唱える団体のコンテストだ。

   その名も、「電柱採集フォトコンテスト」。ツイッターやインスタグラムでハッシュタグ「#電柱フォトコン」をつけて投稿することで応募でき、Yahoo!リアルタイム検索から確認できるツイッター投稿だけでも、2017年8月17日のスタート以来、9月4日時点で800件近い「電柱写真」が投稿されている。

   公式サイトによれば募集しているのは、「景色のじゃま」「通行のじゃま」になっている電柱の写真だ。ところが、応募写真を見てみると、上記のように「美しい」風景を捉えたものの方が目立つ状況となっている。

「電線や電柱が美しい景観を妨げています」

   件のコンテストを主催する「無電柱化民間プロジェクト実行委員会」は、こうした無電柱化を支持する一般社団法人だ。公式サイトには、「電線や電柱が美しい景観を妨げています」「電線は国土の魅力と安全を大いに損なっている」――などといった理念が掲げられている。

   いったいどのような団体なのか。J-CASTニュース編集部が取材を申し込むと、パスワード付きのPDFファイルで、下記のような回答が寄せられた。

   「私どもは、『防災』+『安全・快適』+『景観・観光』の観点から、全国的に無電柱化を促進しようとする政府の無電柱化推進の趣旨に賛同し、民間の立場から応援する団体として、2014年7月に『~上を向いて歩こう~無電柱化民間プロジェクト実行委員会』を設立しました」

   そもそも景観や安全、防災の観点から電柱・電線を地中に移設しようとする「無電柱化」は、以前から国土交通省などが推進している。2016年には超党派の議連の後押しもあり、「電柱化の推進に関する法律」も成立した。

   その「応援団」というべきこの団体は、洋画家として知られる絹谷幸二・東京芸術大学名誉教授が代表を務め、社会経済学者の松原隆一郎・東京大学大学院教授らが理事に名を連ねる。団体名にもあるとおり「民間」の組織であるが、コンテストの後援には国土交通省も名を連ねる。

小池都知事は「醜い景色」と断言

   今回のコンテストは、2014年以来2回目の開催となる。その趣旨は「無電柱化のジブンゴト化」、つまり、多くの人に電柱・電線の存在を意識してもらうことが目的だという。

   「昨年12月に無電柱化推進法が制定され、全国で条例化が進んでいく中で、さらにより多くの人たちに電柱・電線に感心を持ってもらうことを目的とし、第2回無電柱化コンテストを開催しております」(同実行委員会)

   現都知事の小池百合子氏も、このコンテストを応援している。小池氏は衆院議員時代の2015年、上記の松原氏との共著として『無電柱革命』(PHP新書)を出版、都知事としても、都道府県として初となる条例を6月に成立させた無電柱化論者だ。8月22日、

「無電柱化を進めるための、フォトコンテストのお知らせ。どんどん綺麗な景色、醜い景色を写真で送って下さい!」

とツイートし、コンテストの告知に一肌脱いだ。

   だがこの「醜い景色」発言が、一部の人々を憤慨させた。

電柱のある風景は美しい。ない風景もまた美しい

   コンテストに「美しい」電柱風景の写真を複数投稿している「tokyopasserby」さんに、ツイッターのDMを通じて話を聞いた。

   tokyopasserbyさんは、10年来の趣味として、電線・電柱のある風景を写真に収めてきた。「美醜、好き嫌いは別として、ヨーロッパの大都市にはない、アジアの混沌とした風景を特徴付けている」のが電柱、電線だと語る。

   そんなtokyopasserbyさんも、通行や災害への障害になるから、という理由での無電柱化には反対ではないという。

「しかし、無電柱化キャンペーンはそこに美醜の問題を持ちこんでいる。今回、都知事は『醜い景色』とまで言っている。それは待ってくれ。電柱や電線のある風景を美しいと考えている者もいる。美醜に関する価値観の押し付けはお断りしたい」

   「あなた方は美しくないという。しかし私たちは美しいと思う」――そんな主張を伝えるため、人々に電柱のある風景の「美しさ」を共感してもらうため、tokyopasserbyさんはコンテストに、自らの写真を投稿したという。

「電柱のある風景は美しいです。電柱のない風景もまた美しいです。それは人が何を見たいと思っているのかということの違いにしか過ぎません」

   こうした思いを持つ人は、tokyopasserbyさんだけではない。応募写真を見ると、もちろん中には「本来の趣旨」のとおり、「やっぱり邪魔だよね、電柱電線...」「電柱がなければ綺麗な星空が見えたのになぁ」といった投稿もあるが、

「ただ電線がそこにあるそれだけなのに、こんなにも世界は美しい」
「電柱はいいぞ」
「電柱や電線のある空が好き」

など、愛あるコメントとともに、多くの「美しい」写真が並んでいる。

主催側の反応は?

   こうした状況について、主催団体はしかし、想定の範囲内であると言う。

「本コンテストの狙いは電柱・電線に興味をもっていただくということでありますから、当然愛着を持っていらっしゃる方からのご応募もあると考えておりました。私どもとしては関心を持っていただくきっかけになればと考えております」

   また、あくまで団体では電柱のある風景=「醜い景色」と断じてはいない、とした上で、

「いろいろな意見が出てきていると思いますが、多くの方に日常生活や災害時の安全確保、景観の観点から無電柱化について考えていただければと思っております。なお、当選写真などが特定の地域や景観を批判することがなきように十分配慮していきます」

と回答した。

   コンテストは9月29日まで開催される。

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