2024年 5月 2日 (木)

内田康夫さん、「昭和ヒトケタの遺言」  新聞の読者欄にたびたび投書、社会的発言に積極的

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松本清張は永遠の未踏峰

   朝日新聞にも何度も投書している。1992年5月26日の「声」欄では映画監督の伊丹十三氏が暴漢に襲われた事件について書いている。

「私たち文筆業者にとって大きな衝撃であった。かつて『悪魔の飽食』で森村誠一氏が右翼の標的にされたり、朝日新聞の小尻記者が射殺されたり、脅威が現実になった例は少なくない・・・伊丹氏の奇禍は言論人全員に対する挑戦と受け止め、覚悟を新たにすると同時に、警察の一層の奮起を望むものである」

   2006年2月10日の「声」欄では、紀子さまご懐妊問題で筆を執っている。男性の国会議員がテレビのインタビューに「男の子であったら、うれしい」と答えていたことに、「あぜんとした。何と不用意な発言かと思った」と。「旧憲法時代の男尊女卑思想そのもの」「男の子を産むことのできないでいるお嫁さんの心をどれほど傷つけていることか。全国の女性はもちろん、男性も大いに怒るべきだ」と憤る。

   大先輩、松本清張氏の死去に関しても「声」に投稿している。92年8月7日の掲載だ。「私が推理小説を書く道を歩むようになったきっかけは、松本清張氏の存在を抜きにしては考えられません。『点と線』『砂の器』といった作品は、まさにトラベルミステリーの先駆。私の書くものなどは、その影響から生まれた亜流でしかない」。

「日本の文学風土に、氏は「推理小説」という手法によって、人間の哀歓を描き、政治・社会の矛盾や悪を鋭く抉(えぐ)る、まったく新しい境地と可能性を切りひらいたのです」
「訃報に接し、悲しみと同時に身の引き締まる思いがします。松本氏と氏の作品は、私にとって、いつか越えたいと願う永遠の未踏峰でありつづけることでしょう」

   投書の肩書はいつも「軽井沢町、作家、内田康夫」。えっ、この人あの内田さんじゃないの、と気づく人もおれば、気づかない人もいたかもしれない。大人気作家にも関わらず、一般の読者と同じ視線で投稿し、新聞の片隅に、「庶民の声」として自分の意見が掲載されることにこだわった人でもあった。

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