2024年 4月 30日 (火)

保阪正康の「不可視の視点」明治維新150年でふり返る近代日本(6) 「弱者の側に立つ帝国主義的道義国家」(その2)

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もし「愛国社」が政権取っていれば...

   この愛国社は、翌12年の第3回大会で国会期成同盟と名を変えて、国会開設を要求する団体にと衣替えする。国会開設は人民の権利だというのである。

   この愛国社の動きを改めて検証することで、帝国主義的道義国家の源流のひとつを確認することができる。国会開設にいたるまでの愛国社の動きの中に欧米に伍していくとの強い意志が感じられる。もし彼らが政権をとっていたらまさに西欧帝国主義 に対峙する道を選択したであろうことは容易に推測できる。彼らを突き動かしているのは仁や義といった徳目の世界の価値観だからだ。私のいう帝国主義的道義国家とは、つまりはこの愛国社の趣意書を立脚点として広がる近代日本の道筋である。この道筋に宮崎滔天や山田純三郎、それに萱野長知、平山周などの辛亥革命に仁と義をかけた志士たち、その方向は違ったが、大正期の国家主義者たちの姿が浮かんでくる。そう思えば近代日本の150年はより重層的であることを知らなければならないと思えてくる。(第7回に続く)

プロフィール
保阪正康(ほさか・まさやす)
1939(昭和14)年北海道生まれ。ノンフィクション作家。同志社大学文学部卒。『東條英機と天皇の時代』『陸軍省軍務局と日米開戦』『あの戦争は何だったのか』『ナショナリズムの昭和』(和辻哲郎文化賞)、『昭和陸軍の研究(上下)』、「昭和史の大河を往く」シリーズなど著書多数。2004年に菊池寛賞受賞。

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