2019年 12月 9日 (月)

日米貿易交渉 トランプ政権が送り込む「実力者」にどこまで戦える?

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   来る日米貿易交渉は、日本にとって楽なものではなさそうだ。

   日本側は「物品貿易協定(TAG)」交渉だと強調するが、米国側は通信や金融などサービス分野も協議するほか、通貨安を誘導する為替政策を取れなくする「為替条項」などまで求める姿勢を鮮明にしている。米国の政府機関閉鎖の影響も含め、先行きは読めないが、トランプ政権に押し込まれる懸念はぬぐえない。

  • 米側の交渉を指揮するロバート・ライトハイザー氏(米農務省より)
    米側の交渉を指揮するロバート・ライトハイザー氏(米農務省より)

自動車については「懸念消えない」

   安倍晋三首相が、サービスなども包括的に含む「自由貿易協定(FTA)交渉はしない」と「公約」してきた手前、日本としては、モノの貿易に絞ったTAGだと説明するが、米国が実質的なFTAを目指していることは、2018年12月21日に米通商代表部(USTR)が公表した「交渉目的」でも明らかだ。

   交渉目的は、貿易関連法で、貿易協議に入る30日前に米議会に通知するよう定められたもので、22項目を列挙。もちろん、まず重要視するのが「物品貿易」で、「対日貿易赤字の削減」を優先課題に掲げ、自動車、繊維、医薬品、通信機器などの品目を挙げ、輸入規制の見直しなどを要求している。

   具体的に、日本が警戒する自動車などの輸出への数量制限などには触れず、環境・安全基準など「非関税障壁の引き下げ」が目立つ程度だが、交渉を指揮するロバート・ライトハイザーUSTR代表は1990年代の日米交渉で数量制限で日本を押しまくり、2018年の韓国との交渉では鉄鋼の対米輸出を直近の7割に抑える厳しい数量制限を飲ませ、カナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)見直しによる新たな「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」でも実質的に自動車の数量規制を盛り込んだ実績がある。このため、日本としても「数量規制は、特に自動車について、懸念は消えない」(通商関係者)。

日本の主張を「尊重する」とは言うが

   農産物も予断を許さない。9月の首脳会談で「日本の農産品の市場開放は環太平洋経済連携協定(TPP)など過去に結んだ経済連携協定での合意が限度」と「確認した」とされるが、「日本の主張を『尊重する』としたもので、米国がそれでいいと認めたわけではない」(大手紙経済部デスク)。実際、「TPP以上の譲歩を日本に求める」(パーデュー農務長官)という声が閣僚からも出ている。

   医薬品や医療機器についても「公正な手続きを求める」とした。米国ではがん治療薬などが極めて高額。日本は政府が薬価を決め、財政を圧迫する新薬の価格を下げる制度にしたことに、米製薬業界が反発しており、日本側は米国が薬価制度の見直しを迫るのではないかとの警戒感が強まっている。

   これらの物品以外の項目も、日本には厳しい。代表的なのが、通貨安への誘導を禁じる「為替条項」だ。円高が急進したような場合、円売り介入を制限されかねず、投機に対処しづらくなる。トランプ政権に影響力を持つ米自動車業界は、円安を武器とした日本車の輸出攻勢を批判しており、交渉でも日本に強く求めて来そうだ。

   もう一つが、中国との貿易協定の締結を難しくする通称「毒薬条項(ポイズンピル)」だ。交渉目的に「日本が非市場国とFTAを結べば、透明性を確保し、適切な行動をとるための仕組みを設ける」と明記している。「非市場国」とは中国を念頭に置く表現で、日中韓3カ国のFTAや、中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する自由貿易圏構想「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」など日本が進める中国を含む通商外交の手が縛られる恐れがある。

日本側には急ぐ必要はないものの...

   為替条項も毒薬条項とも、USMCAに盛り込まれており、日本は基本的に受け入れない方針だが、トランプ政権はUSMCAを今後の通商交渉のひな型と位置付けるだけに、日本にも強く求めてくるのは必至だ。

   交渉は2019年1月下旬にも始まると見られていたが、遅れそうな雲行きだ。米政府機関の一部閉鎖で出勤するUSTR職員は通常の半分以下に落ちているといい、米国にとって最大の懸案である米中貿易協議が3月1日までと期限が切られていて、当面はそちらに注力せざるを得ないためだ。1月21日付の朝日新聞(ウェブ版)は、春以降になるとの見通しを示している。

   日本は、「元々、進んでやりたい交渉ではない」(通商関係者)。特に、交渉開始を確認した首脳会談の共同声明で「協議が行われている間、この共同声明の精神に反する行動を取らない」と確認しているので、交渉が続いている間は自動車への高関税などの措置は取らないはずだから、急ぐ必要はないわけだ。

   しかし、米国は、米国抜きのTPP(11カ国)がすでに発効し、2月には日本・欧州連合(EU)経済連携協定(EPA)も発効する。これにより、日本市場で豪州や欧州の農産品の関税が下がって米国産品より有利になり、米国の農家の突き上げが激しくなるのは確実。また、米国の輸入車への高関税措置に関する調査報告が2月中旬までに提出されるが、大統領はそこから90日以内に発動の可否を判断することになっており、5月に大きな節目がやってくる可能性がある。

   日米首脳は6月末に大阪で開く主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて首脳会談を開く見込みで、ここをにらみながらの交渉になるが、トランプ政権ペースで押し込まれる懸念は消えない。

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