2024年 4月 27日 (土)

「検察官同一体の原則」と「法的安定性」 定年延長問題のポイントを振り返る

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検察内部からも「信頼が疑われる」

   「検察庁法」がつくられた目的、検察権力のあり方、検察の中立性などを踏まえると、国家公務員法の延長規定を「検察庁法」にも適用することは、政府解釈を変更したから適用可能というほど、単純な問題ではないことが見えてきたと思う。

   というのも、今回の定年延長は「法的安定性」にもかかわる問題だ。政府は1981年の人事院答弁で「検察官には国家公務員法の定年制は適用されない」と答弁し、以降30年以上にわたり、ただの一度も例外を認めることなく、この答弁を維持してきた。

   長年にわたり答弁や法律が安定的に維持されることを「法的安定性」というのだが、国民はこの「法的安定性」を信頼して行動している。たとえば、信号機が青信号の時に動く、赤信号の時に止まるというのも「法的安定性」だ。国民が信頼して行動しているからこそ、突然の解釈変更は混乱を招くため、解釈を変更するならば、社会情勢などを踏まえた合理的な理由が必要となってくる。

   仮に、時の政権の都合で、従来の法解釈を自由に変更して構わないとなると、国会が議論して決めた法律であっても、運用は時の政権の意向次第という危うさをはらむことになる。そうすると、「法的安定性」が損なわれ、ひいては「法治国家」の根幹が揺らぐことになるため、今回の定年延長においても批判が相次いでいるのだ。

   安倍政権に擁護的な産経新聞でさえ「主張」(社説)で「安易な解釈変更に頼らず検察庁法を改正するのが本筋だった」「法務省が、法治国家の行政のありようを傷つけたのは問題だ」と論じ、検察内部からも「不偏不党でやってきた検察への信頼が疑われる」との声も挙がっているという(NHK報道より)。

   「法治国家の根幹が揺らぐ」との批判に、安倍首相や法務省はきちんと応えられているだろうか――。求められているのは国会答弁の修正や撤回ではなく、合理的な理由や慎重な議論なのかもしれない。

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