2024年 4月 25日 (木)

岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
4年前とは違う厳重警戒下の投開票

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「すべての票を数えろ!」

   フィラデルフィアでは、市役所からフィラデルフィア美術館へと続く紅葉の美しい並木道を、男女8人がそれぞれ、手作りの青い投票箱にすっぽり入り、 「VOTE(投票しよう)」と書かれたサインを手に、ぎこちなく歩いているのを見かけた。

   彼らは映画「ロッキー」の音楽に合わせて踊り、替え歌で「みんな、投票しようね」と呼びかけていた。

   代表の男性は、「党派に関係なく、投票してほしいんだ」と訴えていたが、話を聞くと皆、民主党支持者だった。勝利を跳び上がって喜ぶ演技をするなど、まるで幼稚園の学芸会のようで微笑ましい。

   今回の選挙では投票日前にすでに、過去最多の1億人以上が投票を済ませたと報道されている。投票率が高ければ、これも結果に大きく影響するため、今回の大統領選の行方を予測するのは、とても難しい。

   フィラデルフィアの市庁舎前では、「PROTECT THE RESULTS(結果を守れ)」などと書かれたサインを手に、抗議活動が行われていた。

   「郵便投票は、不正が行われる可能性が高いから、信用できない」とトランプ氏は主張し続けてきた。郵便投票の中には投票日以降に届くものも多くある。その開票作業を無視して票に数えず、即日開票分だけで、トランプ氏が勝利宣言するのではないかと、民主党側には懸念が広がっている。

   投票日、マンハッタンでも、「すべての票を数えろ!」と抗議活動が展開された。首都ワシントンでは、トランプ氏の動きと選挙結果によっては、大規模な抗議運動が展開されるだろう。ホワイトハウスは高い柵で取り囲まれ、厳重な警備態勢が取られている。

   じつは私は今、投票日の3日夜、ニューヨークから首都ワシントンへ向かうバスの中で、これを書いている。突然、思い立ち、バスに飛び乗った。バスが到着するのは、夜8時だ。

   さっき、バスに乗った時、黒人男性のドライバーに、「どこへ行くんだ?」と聞かれた。「ホワイトハウス」と答えると、一斉に乗客の視線を感じた。

「ホワイトハウス? そんなとこに行ったら、逮捕されるぞ。今、何が起きているか、わかってるんだろ」

   そして今、わたしはホワイトハウス前に立っている。

(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計40万部。2019年5月9日刊行のシリーズ第9弾「ニューヨークの魔法は終わらない」で、シリーズが完結。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

 
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