2024年 4月 20日 (土)

外岡秀俊の「コロナ 21世紀の問い」(27)感染が再拡大した欧州の「いま」と日本の「あす」

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激しい第2波と日本の7倍になる犠牲者

   メルケル首相が今のロックダウンを決めた時点で、新規感染確認は、過去最多の約1万5千人だった。感染経路を追うのが難しくなり、クリスマス前に制限をかけることで、抑え込みたいとの狙いだった。だが梶村さんはこういう。

「今回の行動制限後、感染拡大はようやく頭打ちになってきたが、まだ油断はできない。総じて言えることは、この冬の第2波は、春の第1波より激しいということだろう」

   その例として挙げるのは、死者数の増加だ。今の時点で、日本の死者数の7倍に当たる1万4千人以上の犠牲者を出している。

「9月上旬ころは、この勢いが続けば年内に死者が1万人に達するのもやむを得ないか、という認識だった。だが、11月になると死者が1日100人単位で増え、昨日も267人が亡くなった。ドイツ全土に感染が広がり、その増加に応じて重症者や死者が増えている」

   梶村さんは感染度に応じて色を塗り分けたコッホ研究所の資料を送ってくださったが、それを見ると、全体が赤く染まり、全土への広がりが一目瞭然だ。だが、その中でも、ドイツの南部、西部が濃く、東部と北部では比較的広がっていないことも読み取れる。

「今回の特徴は、ドイツと国境を接したポーランドやチェコなど旧東欧での感染が拡大していることだ。人口が約3800万人のポーランドでは、人口8200万人のドイツよりも多い新規感染者が出ている」

   医療態勢の充実したドイツでは、今月に入ってベルギーやオランダ、フランスからコロナ重症患者を受け入れ始めたが、そろそろ国内のICU施設も逼迫し始めており、緊急ではない手術を先延ばしして、コロナの重症患者を受け入れるなどの措置を取り始めた。

   だがドイツの強みは、将来を読む先見性と持ち前の組織力だ。ベルリン市はこの春、見本市会場に、500床の臨時集中治療病院の施設を敷設した。当初は1千床の予定だったが、まだ余力があったため半分で建設を中止し、空いたままになっている。

   梶村さんによると、ボランティアで建設を主導したのは、元ドイツ連邦技術支援隊隊長のアルブレヒト・ブレーメ氏(67)だった。

   彼は技術大学を卒業後に兵役代替役務で消防士を務め、長く元ベルリンの消防署長をした人物だという。その後、当時の連邦内務大臣で現連邦議会議長ショイブレ氏によって支援隊隊長に任命された。2年前に定年引退したが、今回のコロナ禍で手腕を見込まれ、建設を引き受けた。

   建設開始が3月下旬で、わずか6週間後の4月末には500床を完成させた。経費は日本円で480億円かかった。未使用になっていたので一時は「ムダ遣い」との声も出たが、今は「安心の担保」になっていることから、非難する声ははほとんどないのだという。体外式模型人工肺のECMOこそないが、酸素吸入装置やCTを使える作りになっており、今は最悪の場合を想定して機器を使う訓練をしているという。

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