2024年 4月 26日 (金)

「もう出ていくお金しかないですよね。そういう状況なんです」 GoTo停止で旅行会社員が「知ってもらいたいこと」

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   菅義偉首相が2020年12月14日、新型コロナウイルスの影響で失われた観光需要喚起策「Go To トラベル」キャンペーンについて年末年始の2週間、全国一斉に一時停止すると表明したことを受け、旅行会社はキャンセルや問い合わせの対応に追われている。

   東京都内の旅行会社に勤める男性Aさんは15日昼、J-CASTニュースの取材に「『さぁ!今からだ』というところでの全国一斉停止です」と嘆息した。一時停止の詳細が、客の相談を直接受けるセンターまで行き届いていないといい、問い合わせも「できれば控えてほしい」と話す。現状を聞いた。

  • 「Go To トラベル」キャンペーンの旅行者向け公式サイトより
    「Go To トラベル」キャンペーンの旅行者向け公式サイトより
  • 「Go To トラベル」キャンペーンの旅行者向け公式サイトより

「ネットニュースで速報を知り、周りに伝えたら『え、マジかよ』」

   Go To トラベルの旅行者向けサイトで14日、公開された説明によると、新規・既存予約を問わず、また地域によらず、12月28日0時から21年1月11日24時までの旅行を対象に、Go To トラベルの適用は停止する。12月28日以前に出発する旅行も、上記期間を含む旅行は同じように適用外。既存予約については14日~24日の間、無料でキャンセルできる。また、赤羽一嘉国土交通相は15日の会見で、キャンセルを受けた事業者への補償をこれまでの35%から50%に引き上げると表明した。

   突然の方向転換だった。政府は11月25日に「この3週間が勝負」と感染拡大防止を呼びかけたが、状況は好転せず。菅氏は12月11日、動画配信サイト「ニコニコ生放送」の番組に出演した際も、Go To トラベルの全面的な一時停止に「そこは考えていません」と語っていたが、一転した。

   旅行業界にとって年末年始は書き入れ時。一時停止の28日までわずか2週間というタイミングで発表され、ツイッターでは「旅行会社の人もキャンセルの電話や相談で大変やろうな」「キャンセルの期限はもう少し伸ばしてあげないと旅行会社やホテルの方々が気の毒だわ」などと旅行会社への懸念の声が相次いだ。

   実際、どんな状況に置かれているのか。都内のある旅行会社に勤務するAさん(30代)が15日、J-CASTニュースの取材に応じ、発表直後の社内の様子を明かした。

「発表された段階では誰も全国で一時停止というのは知りませんでした。私がネットニュースで速報を知り、周りに伝えたら『え、マジかよ』とみんなが驚いていました。まさか全国一斉に停止とは思いもよりませんでした。現段階(15日昼時点)では、ある程度情報が入っております」

「苦労が水の泡」に共感

   Aさんの会社では個人向けと団体向けとで担当が分かれ、Aさん自身は後者。団体向けだけで、年末年始は既に計約2000人分の予約が入っている。しかし一時停止を受けて一転。ネットで同業者とみられるユーザーの「苦労が水の泡」という書き込みを見かけ、大きく頷いたという。

「団体旅行は10月1日に東京がGo To トラベルに追加されて以降、前年比を大幅に上回る売り上げを記録していました。全体数値で言えば非常に厳しい状況ですが、それでも団体は軌道に乗っていたので『さぁ!今からだ』というところでの全国一斉停止です。

団体は催行最少人数が決まっており、それを下回ると催行しても赤字になります。特に年末年始は添乗員型の団体旅行は高額な上に人気で、今年もかなりのコースが催行するはずでした。コースを1つ作成するにもかなりの人数とかなりの時間を費やしています。

また、地域共通クーポンというのも大変で、年末年始はたくさんのご予約があるのでクーポンを何千枚何万枚という単位で1枚1枚日付スタンプを押し、利用可能な都道府県のシールを貼り、お客様がどのクーポンかわかるように1人1人クーポン番号を入力して、という作業をしています。それが全て廃札、不要になります」

   Go To トラベルの一時停止という措置そのものは「感染予防のために構いませんし、良いと思います」という一方、「しかし問題なのは、『なぜ勝負の3週間に何もしなかったのか』『なぜ先週金曜日まで停止しないような発言をしたのに急に変わったのか』という点です」と、急転したことに疑問を隠さない。

問い合わせ「できれば控えてほしい」

   自分の旅行が対象外になるかどうかなど、問い合わせが各社で相次いでいる。Aさんは現時点での旅行会社への問い合わせについて、複雑な胸中をのぞかせる。

「できれば控えてほしいです。なぜなら問い合わせを受けるセンターまでまだ何も情報が入っていないので、社内の者も不明点だらけだからです。しかし、これも私がお客様なら問い合わせしたい気持ちはあるので致し方ないと思います」

   「1つお願いがあります」。Aさんは取材の最後、そう言って旅行業界の構造、現状、世間からの風当たりに、率直な心境を明かした。

「私のいる団体旅行で申しますと、年始にお1人100万円ほどの旅行催行があります。この旅行を催行するために1年ほど前から、つまりコロナが始まる前から、貸切列車の手配、豪華なバスの手配、高級宿や食事会場の手配を行っています。そして、すでにそれに対する費用もかかります。

しかし、実際にはキャンセルが相次いでいます。キャンセルが相次いでも催行すると、1人当たりの売り上げが減ってしまいます。旅行は1件あたり10%程度利益があれば良いと言われています。逆にいうと90%が各関係箇所に支払うのです。

つまり50%という大きな補填があっても、40%は赤字なのです。それが何件も何件もあるから、もう出ていくお金しかないですよね。そういう状況なんです。それをもう少し皆さんにも知ってもらいたいと思います。

飲食業や製造業はどちらかというと現在から未来のためにやっていますが、旅行業は旅行を楽しむために過去から現在に進んでいます。なので、『旅行業ばかり...』と言われても、もう1年も前から支払っている料金などもあるわけです」

「一時停止の対象かという確認や、キャンセルしたいという問い合わせ」

   旅行大手の日本旅行(東京都中央区)は15日、Go To トラベル特設サイトで「国土交通省より発表の一時停止・自粛などについて、詳細はGo To トラベル事業公式サイト(編注:同サイトへのリンク付き)でご確認ください。弊社対応につきましては確定次第改めてご案内します」と案内。同日夜までに更新され、同社の具体的な対応方法が公表されている。

   日本旅行の広報は15日昼、「お客様ご自身の旅行が一時停止の対象かという確認や、キャンセルしたいという問い合わせが来ています」と取材に話した。一時停止は14日の政府発表で多くの人と同時に知った。その後、観光庁から対応についての通達があったという。「年末年始の予約は前年比9割程度まで回復していましたが、これが今後どうなっていくかというところです」としている。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)

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