2024年 4月 25日 (木)

小沢健二の名曲が「現代のJ-POP」に与えた影響 モー娘。にAKB...大ヒット曲に見る共通点

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【連載】MUTEKI DEAD SNAKEのBUCHIAGARU!! music

   「渋谷系」という音楽ジャンルが、いま再び注目を集めている。

   渋谷系は90年代に東京・渋谷を中心に流行したジャンル。都会的で、おしゃれな雰囲気を持った楽曲が特徴だ。最近では、シティポップの流行も相まって、同シーンを特集した書籍の出版が続くなど、音楽ファンの間で再び注目が高まっている。

   そんな「渋谷系」の音楽シーンを牽引した存在といえば、シンガーソングライターの小沢健二さんだろう。

   元フリッパーズ・ギターのメンバーで、91年の解散後はソロで音楽活動をスタート。ラップグループのスチャダラパーと共演したシングル『今夜はブギー・バック』は大ヒットを記録、95年と96年には紅白歌合戦にも出場している。

   今回は、そんな小沢さんの代表曲「強い気持ち・強い愛」(Metropolitan Love Affair)に注目。音楽作家のMUTEKI DEAD SNAKE氏がその魅力を解説する。

  • 小沢健二「強い気持ち・強い愛」ジャケット(EMIミュージック・ジャパン)
    小沢健二「強い気持ち・強い愛」ジャケット(EMIミュージック・ジャパン)
  • 小沢健二「強い気持ち・強い愛」ジャケット(EMIミュージック・ジャパン)

改めて思い知る、作曲家・筒美京平の凄さ

   僕の周りでもファンの多い小沢健二さん。自分は90年代のブームをリアルタイムで体験した世代ではないのですが、唯一無二の個性に惹かれ、昔から楽曲をよく聴いていました。今回は小沢健二さんの楽曲の中から、個人的に大好きな「強い気持ち・強い愛」をピックアップして書いていこうと思います。

◆筒美京平節にBUCHIAGARU!!

   こちらの楽曲は、小沢健二さん本人が作詞を、そして日本を代表する作曲家である筒美京平さんが作曲をしています。

   作曲をしている人間に筒美京平さんから影響を受けてない人はいない!と言い切れるくらいの大レジェンドですが、やはりこちらの楽曲も筒美京平さんの素晴らしいメロディを堪能することができます。

   「強い気持ち・強い愛」のサビの構成に注目していただきたいのですが、こちらの楽曲では4小節の「強い気持ち 強い愛 心をギュッとつなぐ」の歌詞の部分のメロディを2回繰り返して、「今のこの気持ちほんとだよね」という短いフレーズでサビを締め括っています。

   実はこのような構成で作られているメロディが筒美京平さんの曲には多く、例を挙げますと小泉今日子さんの「なんてったってアイドル」も、TOKIOの「AMBITIOUS JAPAN!」もサビの最初に4小節の印象的なフレーズを作成し、それを2回繰り返した後に短いフレーズでサビを締め括る、という構成になっています。

   このような構成で作られているサビは現代のJ-POPではなかなか見ることがないなと思いますし、そもそも長い歴史の中でここまですっきりとした構成のサビで名曲を作り上げた方はほとんどいないのではないかと思います。

   理由としては、たった4小節でインパクトを与えることができ、なおかつ全く同じものを繰り返しても飽きないようなパンチがあるフレーズをほとんどの作曲家に作ることができなかった、ということなのではないかなと思います。

   もちろん現代ではメロディの情報量が増え、サビの長さも、音数の多さも、昔の楽曲と比べるとかなりインフレしていると思うのですが、そんな中でも筒美京平さんの作るメロディには学ぶものがあるなと思いますし、いつ聴いても古くない素晴らしいものが多いなと思います。

AKB48やモー娘。の楽曲にも与えた影響

◆盛りだくさんの日本的なディスコサウンドにBUCHIAGARU!!

   「強い気持ち・強い愛」のサウンドは、いわゆる70年代や80年代に流行った海外のディスコのサウンドを取り入れたものになっており、リズミカルなブラスやストリングス、ワウをかけたギターのカッティングなど、踊りたくなる要素がふんだんに盛り込まれています。

   この曲を聴いていて思うのが、とにかくアレンジが派手だな!ということです。

   名曲が沢山ありすぎてここでは紹介しきれませんが、海外の当時のディスコの楽曲群と並べて聴き比べてみると、使用している楽器の数も、音の数も圧倒的に多いんですよね。

   海外の当時のディスコの楽曲は、この曲ではストリングスをメインにしているのだな、とかピアノメインにしているのだな、とか、1曲ごとに印象に残る楽器がだいたい1つや2つくらいのものが多いと思います。

   しかし「強い気持ち・強い愛」は、ディスコサウンドのいいところを全部取り込んで、何か1つの楽器を印象に残す、というよりも様々な楽器でゴージャス感を演出することを目指して制作されたのではないかと思われます。

   それはどちらが良いとか悪いとかの話ではなく、全体的に音を詰め込んで派手なサウンドにする、ということが日本の楽曲の特徴なんじゃないかなと思っていますし、このようなサウンドを聴きたい時には、日本のディスコを聴くしかないと思います。

   数年前に一世風靡したAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」や、モーニング娘。の代表曲「LOVEマシーン」といった楽曲もディスコサウンドですが、この「強い気持ち・強い愛」のようなゴージャスなものになっていますし、実はこの楽曲が後の日本の音楽に与えた影響はかなり大きいものがあるのではないかな?と思っています。

   個人的には、ストリングスがメインのフレーズを弾き、その後ろで速いブラスのフレーズやコーラスが入る盛りだくさんなイントロが大好きですし、これからもずっと人々に愛されていく曲なのだろうなと思いました。

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連載:MUTEKI DEAD SNAKEのBUCHIAGARU!! music

音楽作家のMUTEKI DEAD SNAKEが、今話題の楽曲や名曲のいいなと思うポイント、つまり『BUCHIAGARU!!』要素を解説する連載です。本人曰く「性格的にはそんなにBUCHIAGAってはいないです」Twitter→@mutekideadsnake
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