2024年 5月 5日 (日)

「この状態続けば廃業する」 消費低迷、凶作で市場縮小...和歌山の梅干し問屋が訴えた「危機感」

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   梅干し製造問屋・梅樹園(和歌山県日高郡)のツイッター担当者が業界の窮状を説明し、大きな注目を集めている。梅農家が作った梅干しは行き場のない状態にあり、このままでは多くの梅干し屋が廃業する可能性があるという。

   一体どういうことか。J-CASTニュース編集部は2023年1月11日、梅樹園の代表取締役・生田富哉さんに取材した。

  • 梅樹園の梅干し
    梅樹園の梅干し
  • 梅樹園の公式ツイッター
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ピーク時から約4割減...低迷する梅干し消費

   梅樹園は1911年、梅づくりが盛んな和歌山県のみなべ・田辺地域で創業した。同社のツイッター担当者は23年1月10日、梅干し業界の置かれた状況を次のように発信した。

「令和元年から令和3年の梅干しの年間消費量は、1世帯当たり約663gです。多くの方が663gと聞いてもピンとこないと思うので、もう少し分かりやすく説明すると、弊社の梅干し倉庫はパンクしており、梅農家さんが作った梅干しの多くは行き場のない状態です。またこの状態が続くようであれば、弊社も含め多くの梅干し屋さんが廃業することになります」

   この投稿は約877万回表示され、約2万3000件のリツイート、約5万5000件の「いいね」が寄せられる大きな反響があった。

   取材に対し梅樹園の生田さんは、今すぐに倒産する可能性があるわけではないと前置きしたうえで、余剰な梅が発生した理由について次のように説明する。

   総務省の家計調査を参照すると、1世帯当たりの梅干しの年間購入数量(二人以上の世帯)は約20年前をピークに減少傾向にある。02年には1053グラムだったが、21年には658グラムに激減した。生田さんは、若年層の梅干し離れ、人々の白米離れ、物価上昇による買い控えなどを理由に挙げる。さらに2年前からの凶作も尾を引いている。

凶作で市場が縮小...収穫量の安定課題に

「梅づくりは天候に左右されるもので、ここ2年は豊作ですが3年前(2020年)の凶作の影響が強く残っています。20年6月に収穫された梅は例年の半分ほどの量でした。開花シーズンに受粉のためのミツバチが飛び回る気温に達しませんでしたし、雨不足によって実も肥大化しませんでした。梅が足りなくなった結果、供給も十分できずに値段が上がってしまい、市場も縮小したところに2年間の豊作が続き原料が飽和しました」

   農林水産省の発表によれば、20年の梅の収穫量は全国で約7万1100トンだった。前年産に比べ1万7000トン(19パーセント)減少している。供給減で卸値も高騰し、20年は1キログラム当たり平均611円だった。1980年代から2019年までは、ほとんど200円から400円台だった。

   生田さんは、天候に左右されやすく収穫量が安定しないことを課題ととらえており、農園の拡大に力を入れるとしている。

「新しい品種の栽培や、栽培方法・有機農業など将来的に産地で試されるであろう農業を率先して取り入れ、負担なく農家に取り組んでもらえるための仕組みづくりを行っています」

   また若い世代にアプローチするために、新商品の開発にも力を入れている。前代表の生田昇司さんは開発好きだそうで、「元祖かつお梅」や「あまちゃづる梅」など、調味梅干しの先駆けとなる商品を生み出している。焼酎ブームになった際には、酎ハイ用の調味梅干しを作り、焼酎に梅干しをいれる楽しみを広めた。

梅とともに育ったツイッター担当者の想い

   生田さんは、みなべ・田辺地域では多くの人々が梅の産業に携わっているとして、「地域に育ててもらった企業・人として、梅の消費を回復させ地域産業を発展させ、また日本の食文化を守り伝えていくという使命があると思っています」と述べる。

   ツイッター担当者も田辺市出身だ。地元の暮らしに根差した梅産業を支えたいと梅樹園にやってきた。ツイッター担当者は、冒頭のツイートに続けて次のように訴えている。

「今回伝えたかったことは、苦しいので助けてくださいということではございません。この現状を打破するために、私ができることを、弊社ができることを、全力で取り組んでいくことを宣言したかったのです」

   生田さんはツイッター担当者を「梅の業界を、当社を何とかしたいという情熱の塊のような青年」と評する。SNSを通して自社のファンづくりと梅の魅力発信に努めてほしいと、期待を込める。

   今回のツイートを通しては、多くのツイッターユーザーから「頑張ってほしい」などと応援する声が寄せられ、生田さんは「正直梅干しの事にこんなに多くの方が興味持っていただけることが驚きと喜びで感動しています」と受け止める。

「おかげさまで、1日で1か月分の注文をいただきました。最終目標は日本中・世界中での梅の価値を引き上げることです。まずは自社そして紀州南高梅と産地全体が盛り上がるように情報発信を継続していきます」

(J-CASTニュース編集部 瀧川響子)

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