2024年 4月 20日 (土)

「釜玉ラーメン」は定番食になるか 「卵と麺」シンプルさで専門店続々...識者「家庭でも浸透の可能性」

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   讃岐うどんの本場・香川県で生まれた「釜玉うどん」。茹でた麺に生卵と醤油を混ぜて食べるシンプルな料理だが、そのスタイルが今、ラーメン界に押し寄せている。

   2022年春に東京にオープンした釜玉中華そば専門店が火付け役となり、各地で「釜玉ラーメン(中華そば)」を提供する店舗が相次いだ。飲食業界に詳しい識者は、その作りやすさなどから、家庭でも浸透する可能性があると話す。

  • ラーメン業界に押し寄せる「釜玉化」の波(写真は「ナポレオン軒」の釜玉中華そば)
    ラーメン業界に押し寄せる「釜玉化」の波(写真は「ナポレオン軒」の釜玉中華そば)
  • ナポレオン軒の店舗(東京都目黒区)
    ナポレオン軒の店舗(東京都目黒区)
  • 卓上に置かれた調味料や薬味を使って「味変」が楽しめる
    卓上に置かれた調味料や薬味を使って「味変」が楽しめる
  • 中華そば(外食)の価格推移
    中華そば(外食)の価格推移
  • ラーメン業界に押し寄せる「釜玉化」の波(写真は「ナポレオン軒」の釜玉中華そば)
  • ナポレオン軒の店舗(東京都目黒区)
  • 卓上に置かれた調味料や薬味を使って「味変」が楽しめる
  • 中華そば(外食)の価格推移

物価高直撃...出した結論は「何も乗せない」

   東急東横線・都立大学駅(東京都目黒区)から歩いて30秒。東横線の高架下に店を構えるのが「釜玉中華そば ナポレオン軒」だ。提供される基本の麺メニューは「釜玉中華そば」。小・並・大の3サイズが選べ、小サイズは490円で購入可能だ。

   少量の醤油ダレに浸かった太麺の上に、卵黄と白髪ネギが乗った釜玉中華そばは、釜玉うどん同様に麺と卵をかき混ぜて食べる。卓上には「しいたけ酢」「かつお節粉」「きくらげ」などの薬味が置かれ、好きな時に「味変」が可能だ。替え玉を頼むと、1杯目とは違う麺とタレが楽しめる仕掛けもある。

   22年3月に同地で店を開いたのは、2000年代の「つけ麺」ブームの火付け役と言われる「つけめんTETSU」などを手掛けた小宮一哲氏だ。なぜ、ラーメンを「釜玉」で提供しようと思ったのだろうか。小宮氏は23年2月1日、J-CASTニュースの取材に、昨今の原材料高が背景にあると説明する。

   中華そばに使われる小麦の価格は、北米での不作やロシアによるウクライナ侵攻の影響で海外産・国内産ともにここ2年で大きく上昇。チャーシューに使う豚バラ肉やスープに用いる昆布、しょうゆなど、ラーメンに欠かせない素材の価格も軒並み上昇した。こうした背景もあってか、総務省の調査では、中華そば(外食)の全国の平均価格は20年12月に約600円だったのが、22年12月には約632円まで上がっている。

   多くの食材を使うほど物価高の影響を受け、ラーメンの値上げを迫られる現状。小宮氏が考え出したのは、「何も乗せない」という選択肢だった。

「私たち、飲食店は原価率を30%以下にすべきと考えています。つまり原価30円の具を乗せたら販売価格は100円上げる必要が出てきます。そのため、何も乗せなければ大きな値上げを回避出来ると考えました。何も乗せない事が正しく、美味しい麺が出来ていた状況では、釜玉一択でした」

「釜玉うどん」並みに定着する?

   1000円超のラーメンもある時代で、1杯490円~という安価な値段設定も特徴だ。小宮氏は「食材価格高騰の中、業界全体が値上げを余儀なくされています。お手軽な価格帯での商品提供にビジネスチャンスがあると思っています」と話す。大学卒業後、「ユニクロ」などを手がけるファーストリテイリングで勤務していた小宮氏。「適正価格で高品質」はいつだって支持される――。そんな「ユニクロ流」の勝利の方程式が「脳内に刷り込まれているのかもしれない」と笑う。

   オープン後の反響については「とても好評を頂いていると実感しています。もっと近くに店舗が欲しいといったお声も頂戴しています」と話す。去年11月には東京・蒲田に2号店を出店。今後は関東圏内で3店舗の出店を見込んでいるという。

   「釜玉化」の波は日本各地に押し寄せている。「ナポレオン軒」の開店後、埼玉県や福島県にも釜玉中華そば(ラーメン)の専門店が出現。東京のラーメン店でも、メニューとして「釜玉」を提供する店舗が出てきている。

   提供店舗が増えている理由について、ラーメン店などの飲食店を取材してきたフードライターの笹木理恵氏は2月1日、スープを重要とする通常のラーメンと比べて「オペレーションが簡潔で原価も安い」「スタッフの技量による味のブレが少ない」ことや「作り方が簡単でどんな店でも取り入れやすい」点などを指摘する。

   「釜玉」のルーツとなった釜玉うどんは、釜揚げうどんと卵を組み合わせた造語だ。香川県のうどん店が発祥と言われ、全国チェーンの「丸亀製麺」「はなまるうどん」でもレギュラーメニューとして提供されるなど、日本人にとってなじみ深い料理になっている。

   笹木氏は「シンプルな食べ方で、具を用意する手間も省けるため、家庭でのラーメンの食べ方の選択肢のひとつとして浸透する可能性はあるかもしれません」と話す。「釜玉ラーメン」が日本の定番食になる日も、そう遠くはないのかもしれない。

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中