2024年 4月 24日 (水)

「子供が野球をやってみたいと言い出した」 WBC優勝1か月、少年向け教室じわり問い合わせ増加

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   日本が熱狂したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から1か月以上が経った。2023年3月8日の開幕戦から22日(日本時間)の決勝戦まで数々のドラマがあり、侍ジャパンの3大会ぶりの優勝で幕を閉じた。侍ジャパンの「世界一」は日本球界に何をもたらしたのか。J-CASTニュース編集部は、球界の底上げに焦点を当て各関係者に話を聞いた。

  • WBC優勝を決めた日本代表(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
    WBC優勝を決めた日本代表(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
  • 子供を指導する元ロッテ投手の山口氏
    子供を指導する元ロッテ投手の山口氏
  • WBC優勝を決めた日本代表(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)
  • 子供を指導する元ロッテ投手の山口氏

「一番うれしいのは親御さんだと思います」

   WBCの優勝は日本球界の将来を担う子供たちにどのような影響を与えたのだろうか。米国との決勝戦が行われた3月22日から1か月が過ぎた4月22日、東京都世田谷区で子供向けの野球教室「OAKS BASEBALL CLUB」を主宰する篠田哲次氏(52)に現在の教室の状況を聞いた。

   同教室は、小学生以下を対象とした「幼稚園クラス」と「小学校低学年クラス」「小学校高学年クラス」の3つのクラスがあり、月に3回のペースで主に金曜日の午後に教室が開かれる。コーチスタッフはプロ野球OBで構成され、大洋ホエールズの投手として活躍した齊藤明雄氏(68)、ヤクルト、阪神などでプレーした野口寿浩氏(51)らが指導に当たっている。

   同教室に通う子供たちの目的は様々で、地元の野球チームに所属しプロ選手を目指す子もいれば純粋に野球を楽しみたい子もいる。運動不足の解消、体力向上を目的とする子もいるという。

   篠田氏によると、WBCが終了してから1か月で会員数は約10%増えたという。問い合わせが殺到しているわけではないが、その数は確実に増えている。篠田氏は「例年に比べると野球をやったことがないというお子さんが多かったです。グローブを持っていないお子さんが野球をやってみたいと。お子さんに話を聞くとみんなWBCを見たと言っていました」と語り、次のように補足した。

「一番うれしいのは親御さんだと思います。お子さんに何かやらせたいけども何をやらせていいか分からないという親御さんが、お子さんが自分から野球をやりたいと言ってくれて楽しそうに野球をやっているのを見ている。無料体験に参加して楽しそうにやっているのを見て『連れてきて良かったです』『子供が続けたいと言っているのですけど入会できますか』と。お子さんが野球をやりたいと言い出すなんてお母さんのプランには全くなかった選択肢だったかもしれません」

   篠田氏はWBC効果を認めた上で、「野球をやる子供が爆発的に増えなくても本来野球をやらない子供が野球を始めたり、WBCがなければ野球をやらなかったという子供が野球をやるようになったと思います。底辺拡大というよりも縮小を止めたという言い方ができると思います」と説明した。

「サッカーを超えるような感動を与えてくれた」

「例年と比べて野球をやってみたいというお問い合わせが増えたと感じます」

   こう話すのは「新潟アルビレックスBC野球塾」で小学生を指導する山口祥吾氏(30)だ。同塾はプロ野球独立リーグのルートインBCリーグに加盟している新潟アルビレックス・ベースボール・クラブが運営しており、小学1年生から6年生を対象に、新潟校、長岡校、三条校の3校で野球塾を展開している。3人の専属コーチがいるという。

   高校時代、投手として活躍した山口氏は10年ドラフト会議でロッテから育成2位で指名を受け入団。ロッテでは2年間プレーし12年オフに退団した。13年に新潟アルビレックス・ベースボール・クラブに入団し、新潟で3年間プレーして現役を引退。16年から埼玉県内の建設会社で会社員として2年間勤務した後、夫人の故郷である新潟に移住したことをきっかけに球団職員の職を得て、現在は通常業務と並行して野球塾のコーチとして指導に当たっている。

   野球塾にはチームに入っていない子供もいるため、「投げる・打つ・捕る・走る」という基本を教えながら野球の楽しさを伝えているという。現在、3校合わせて塾生は108人で、今後も体験希望者が増えると見込んでいる。

   山口氏は「この時期の塾の体験希望者は昨年よりは多少増えています」とし、「2倍まではいきませんが1.2倍から1.5倍に増えています。親御さんから『子供が野球をやってみたいと言い出したので体験させてもらえませんか』という問い合わせが増えています。毎年、野球をやってみたいというお子さんはいますが、今年に関してはWBC以降で野球をやってみたいというお子さんが例年より多いと感じます」と語った。

   WBCでは同学年の源田壮亮内野手(西武、30)、山田哲人内野手(ヤクルト、30)、牧原大成内野手(ソフトバンク、30)、甲斐拓也捕手(ソフトバンク、30)、大城卓三捕手(巨人、30)らが出場したということもあり「ワクワクしながら観戦した」という山口氏。

「昨年サッカーのワールドカップが盛り上がったので、それに負けないくらいWBCも頑張ってほしいと思いながら見ていました。個人的にはサッカーを超えるような感動を与えてくれたと思いますし、WBC効果はあると思います。今まで野球が選択肢になかったお子さんが、もしかしたら頭のどこかで『野球っていいな』と思ってくれたらうれしいですね」

「熱があるうちに何か具体的な策を講じて...」

   球界関係者はWBCの影響をどのように受け止めているのだろうか。

   WBC13年大会で戦略コーチを務めた橋上秀樹氏(57)は「今回のWBCは親世代に影響を与えたと思います」との見解を示し、次のように持論を展開した。

「親御さんたちがWBCを見て自分の子供に野球をさせたいという気持ちになったという方が大きいと思います。子供に野球をやらせるということは、親御さんの時間的制約を含めて経済的にも負担があります。野球ができる球場がだいぶ減ってきており、送り迎えも親御さんの役目になります。チームによってはマイクロバスがあってチーム関係者が運転するということもあるが、これは珍しいケース。親御さんが指定の場所まで車で送り迎えするというのが一般的です」

   そして「時間的制約、経済的な負担を押しのけてまで野球をやらせたいという魅力が薄れてきたところに今回のWBCです。日本代表の活躍を見て『またちょっと野球を』という親御さんが出てきて、苦労を惜しんででも野球をやらせたいという風潮になってきたのではないでしょうか。子供たちに野球を教えている各方面の関係者から話を聞くと、問い合わせが多くなっているようです」と述べた。

   これまでのWBCの歴史を振り返ると、日本代表は06年の第1回WBCで優勝し09年の第2回大会で連覇を果たした。13年、17年といずれも準決勝で敗退し、今回3大会ぶりに「世界一」の座に返り咲いた。

   橋上氏はWBCのような国際大会で日本が優勝したことに大きな意義があると指摘した。

「今回WBCで優勝して世界のトップレベルにいることを証明できました。これが野球離れをしていた人達を引き戻す大きな呼び水になっている気がします。野球が世界のレベルで戦えるというのが1つのポイントです。メジャーリーグのメンバーは100%ではありませんでしたが、世界を代表するアメリカに勝って優勝したことは大きかった。昔に比べると世界が身近になってきています。WBCを見て自分の息子と大谷翔平選手をだぶらせる親御さんもいたでしょう」

   そして「WBCの影響が大きかっただけに一時的なものにしないようにしていかなければならない。NPBは熱があるうちに何か具体的な策を講じて野球の底辺拡大につなげてもらいたい」と期待を寄せた。

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