2024年 6月 17日 (月)

高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
公明党幹部を「がん」批判 麻生太郎氏発言の裏にある「埋め難い溝」...連立めぐる牽制意図も

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   自民党の麻生太郎副総裁は2023年9月24日の福岡市での講演で、反撃能力保有を巡り公明党は専守防衛に反すると主張していたとして山口那津男代表、石井啓一幹事長、北側一雄副代表らを名指しで「ガンだった」と批判した。

  • 麻生太郎氏
    麻生太郎氏
  • 麻生太郎氏

山口代表は「評価控えたい」

   敵基地攻撃能力に関し、「公明党は専守防衛に反するという理由で反対。現実をよく見てみろ、と。専守防衛を言い始めた昔と今は違うだろうが。あのころ北朝鮮からロケットやミサイルが飛んでくると想像していた時代か」と述べた。さらに「時代に合わせてきちんとしたことをしないと、ウクライナみたいに日本が戦場になるだけだ」と続けた。

   山口代表は26日の記者会見で、「麻生さんがどういう意図でどういう場でお話しになったのかは直接聞いていない。前後の関係も分からないので、評価は控えたい」と述べ、論評を避けた。 なお、麻生氏は発言を撤回していない。

   この背景には、安全保障観における麻生氏と公明幹部との間の埋め難い溝がある。

麻生氏からみれば、安全保障面で公明党は獅子身中の虫でしかない

   8月、麻生氏は訪問先の台湾で講演し、「いざとなったら台湾防衛のために防衛力を使う。その明確な意思を相手に伝えることが抑止力になる」と語った。「最も大事なことは戦争を起こさせないことだ」とし、日本と台湾、米国などの有志国・地域について「強い抑止力を機能させる覚悟が求められている。戦う覚悟だ」と指摘した。

   これは、古代ローマの警句「汝平和を欲さば、戦への備えをせよ」に則った、抑止力についての正しい発言だが、その時も公明党は中国を刺激するなと発言した。

   麻生氏からみれば、安全保障面で公明党は獅子身中の虫でしかない。台湾有事が現実化しようとしている時、公明党が自民党の足枷になり、国の進路を誤っては不味いという真っ当な政治判断だろう。

   と同時に、連立パートナーとして安全保障観が似ている国民民主党も加える用意があるとして、公明党を強く牽制する意図があるのだろう。

   実際、今回の内閣改造で、元国民民主党参院議員の矢田稚子氏が異例の首相補佐官に任命された。これは今回の最大のサプライズで、麻生氏も了解済みのはずだ。首相補佐官は定員5人で副大臣クラスの厚遇。将来の国民民主党の連立入りを惹起させる人事だ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣官房参与、元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。20年から内閣官房参与(経済・財政政策担当)。21年に辞職。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「国民はこうして騙される」(徳間書店)、「マスコミと官僚の『無知』と『悪意』」(産経新聞出版)など。


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