就職氷河期世代は老後がヤバそう 給料増えず貯蓄は少なく持ち家比率も低下

   日本総研の経済・政策レポート「リサーチ・アイ」が「50歳代を迎える就職氷河期世代の実像」と題したレポートを公開している。就職氷河期世代とはバブル崩壊後の不景気で就活に苦心した人たちを指し、前期は1974~78年生まれ、後期は1979~83年生まれだ。

   そんな彼らも、2024年から順次50代に突入する。レポートによると、同じ40代後半で比較した場合、氷河期・前期世代の正規雇用比率はバブル世代(1965~69年生まれ)を上回る水準まで上昇している。しかし、実質賃金は上の世代と比べて月6~8万円低い水準で、貯蓄も100万円未満の世帯が多い。

  • 給与が増えなくて資産運用どころではない…
    給与が増えなくて資産運用どころではない…
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40代時点の金融資産「100万円未満」が2割近く

   このレポートは日本総研調査部の研究員が作成したもので、総務省や厚生労働省などが公開した複数の調査結果を再集計・分析し、独自の仮説を提示している。

   氷河期とは呼ばれているものの、非正規雇用に就く45~54歳で「正規雇用がないため」と答えた人の割合は、バブル世代や新人類・後期世代(1960~64年生まれ)より低く、レポートは「2020年度から本格化した政府の支援を背景に、同世代の雇用環境は一定の改善」と評価する。

   問題は「賃金」だ。就職氷河期・前期世代の実質賃金カーブの上昇率は鈍く、40代後半で月給57万円の新人類・後期世代、同55万円のバブル世代に対し、就職氷河期・前期世代は49万円と大きく下がり、後期世代はさらに下回るペースだ。

   「金融資産」の額でも、2人以上の世帯において40歳代時点での保有額が100万円未満という回答は約2割で、上の世代より大きい。給与が増えなくて資産運用どころではない、ということなのだろう。

   レポートは就職氷河期への政府支援策として、就業支援に加えて、雇用延長やリスキリングなどの「所得増加策」や、金融教育を含む「資産形成支援策」にもより力を入れて取り組む必要があると指摘している。

   また、続編「50歳代を迎える就職氷河期世代の実像2」では、就職氷河期世代の単身世帯で持ち家世帯比率が低下していると指摘。住宅取得が増える30~40代前半に住宅価格が高まった一方で、所得が伸び悩んだためと分析している。

   就職氷河期世代がシニア期を迎える時に、住宅難民が急増するおそれもある。要するに就職氷河期世代は、このままいくと老後がヤバくなりそうということなのだ。

失われた30年は「日本企業の人事戦略の古さ」のせい?

   生まれた年が数年違うだけで、人生が大きく変わってしまうなんて――。就職氷河期の前期世代に当たるIT企業勤務のAさんは、このレポートを見て「企業の採用方針を立てる人たちが愚かなんでしょうね」とうんざりした調子で言う。

「私たちの世代に被害者が多いことは言うまでもないんですが、ひとつ上のバブル世代にだって『被害者』はたくさんいるんですよ。だって、採用するときには大歓迎されたのに、40過ぎたら『採りすぎちゃって余ってる』といってどんどん放り出されているんですから」

   同期の人数が多くて仕事の機会を与えられず、後輩も入ってこないので人を育てる経験に乏しいバブル世代。ビジネスパーソンとしてのスキルが磨かれないまま早期退職を勧奨され、途方に暮れている様子は後輩社員から見ても惨めだという。

「その時々の景気に左右されず、毎年同じくらいずつ採用できなかったんですかね。それさえやっていれば、いまになって『余った』だの『足りない』だの言わなくて済んだはずじゃないですか。企業の採用方針が近視眼的なのが悪いんですよ」

   既存社員の解雇が簡単にはできない日本の法制下では、不景気で固定費の圧縮が必要になった企業は、新規採用の数で調整するしかないのも事実だ。しかし、そのことがもたらす社会的な影響をどこまで深く考えたうえで行ったことなのか。

   例えば少子化の加速は、企業の採用方針も大きく影響したに違いない。回り回って、企業の大事な市場も縮小してしまった。Aさんは「失われた30年は、日本企業の人事戦略の古さのせいとしか思えないし、社会問題は今後も拡大していく」と納得できない様子だった。

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