大量生産の駅弁が主に
1960年代には400以上の駅弁業者があった。一駅に2つ以上の業者があることもざらだった。しかし現在では、80業者程度しかないという状況になっている。主要駅でないと、あるいは主要駅であっても駅弁の業者がない。
長野駅にて地元の駅弁業者として長年続いていたナカジマ会館は、2007年に駅弁事業をやめ、不動産事業を中心としている。中央本線の甲府駅では、かつては甲陽軒という駅弁業者があったものの、すでになくなっている。
県庁所在地駅でも、駅弁業者が成り立たないという現実が起こっているのだ。
現在の駅弁業者は、大都会の駅でないと成り立たない。大量生産の駅弁が主である。
東京駅や新大阪駅、仙台駅、新潟駅などは多くの駅弁があることで知られている駅である。
だが地方にも元気な駅弁業者は多くある。東京駅や新大阪駅にある、各地の駅弁を集めたセレクトショップ(例えば東京なら「駅弁屋 祭」)にどんどん商品を出していく業者だ。またそういった業者は、催事などの展開にも熱心だ。京王百貨店の「駅弁大会」にはよく出店している。
「牛肉どまん中」で知られる山形新幹線の米沢駅で駅弁を販売している新杵屋は、「駅弁屋 祭」での販売にも熱心である。また、中央本線の小淵沢駅で駅弁を販売している丸政は、名物駅弁を次々と送り出し、業界内で確固たる地位を占めている。
前述の横川駅「荻野屋」は、ドライブインや高速道路のサービスエリア、都市部での販売など企業努力を続けている。
いっぽうで東京駅の駅弁は、以前は「まずい」と言われていたが、現在は改良に改良を重ね、おいしいものが多く登場している。
働く人が足りないといった問題は地方の駅弁業者にはある。列車の速達化などで購入されにくくなっている事実もある。だが都市部への進出や催事などの販売で生き残っている業者も存在するのだ。
駅弁業界を取り巻く状況の悪化で消えていく業者がいるものの、生き残るところは攻めの経営をしていると言える。(小林拓矢)
筆者プロフィール
こばやし・たくや/1979年山梨県甲府市生まれ。鉄道などを中心にフリーライターとして執筆活動を行っている。著書『京急 最新の凄い話』(KAWADE夢文庫)、『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)。