裏千家前家元、千玄室さん死去、102歳 元「特攻隊員」、「ユネスコ大使」など国際交流にも尽力

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「利休さんが私に色々なことをさせている」

   戦争は千さんの人生を大きく変えた。「千家の坊ちゃん」が「特攻隊員」に。死を覚悟したが、敗戦。「何のために仲間は死んだのか」――怒りと、忸怩たる思い。復員して京都の家に着いた時、「負けました」と門の前に軍刀を置いて土下座した。

   ほどなく家に駐留軍の将校らが来るようになる。「本当の日本を学びたい」というのだ。父の14代宗室は英語が達者で、彼らに茶を教えた。

   茶室には丸腰で、腰をかがめて頭を低くしないと入れない。いったん中に入ると、武士や町民、進駐軍や敗戦国民の区別もない。茶道の人間平等、和の精神を世界に伝えていくことが生き残った自分の使命だと自覚する。

   84年にはバチカンでローマ法王ヨハネ・パウロ二世に謁見し、大聖堂で献茶した。2000年に国連総会の会場わきで平和祈念のお茶会をした時は、韓国と北朝鮮の代表団がそろって訪れ、出席者から一斉に拍手が沸き起こった。

   長身でハリウッドスター並みの端正な容姿。ざっくばらんな人柄もあって、交友関係が広く、文化・国際交流関係だけでなく、ロータリー日本財団会長、日本馬術連盟会長など100以上の様々な公職や名誉職を引き受けていた。

   海軍入隊の前日、父から、千利休が切腹に使った脇差を見せられた。理由が分からなかったが、のちに「無駄死にするな。けっして自分から進んで逝くな」という無言のメッセージだと悟った。

   一度死んだはずの人生。「おそらく、利休さんが私に色々なことをさせているのだと思っています」(自著『茶のこころを世界へ』PHP)と語っていた。

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