成人向け雑誌の仕事が激減...限られた人のみが出られる世界に
雑誌そのものがなくなれば、誌面を飾る人々の仕事も自ずと減る。
活発な時代は表紙~巻頭グラビアから中盤にかけて掲載される「中グラ」とか、ちょっとした企画コーナーが豊富で、雑誌の仕事が演者にとっての憧れだった。小さな企画から表紙へと上り詰める、シンデレラストーリーを夢見る演者も多かったに違いない。
今となっては「雑誌やテレビに出ないと有名になれないセオリー」が消失しつつあり、YouTubeやSNSに喰われている。定期的なオファーを得られる確証はなく、大きな影響力がないとなれば、演者や事務所が紙媒体にあまりこだわらなくなってしまうのだ。
出版社も資金がカツカツだと、確実に売り上げを作れるタレントばかりを起用して「守り」に入る。たしかに人気者だけで回せばある程度は売れるものの、いつも同じ顔ぶれになるのは何とも悩ましい。今の成人向け雑誌やグラビア誌を見ると一目瞭然だが、登場メンツがだいたい似たり寄ったりになっている。
また、「時代は電子書籍」というものの、デジタルに移ったところで一発逆転は非常に難しい。雑誌自体が読者や演者にとって「ひと昔前のもの」という概念に変わった点は否めず、どこかで打開策を見つけなければ、いずれは更に規模が縮小するだろう。
ネット上でのファンクラブ運営やInstagramのグラビア投稿などに客が流れているからこそ、出版業界はこれらの強敵とどう付き合い、差別化を図るかが課題である。
思えば、成人向け雑誌はサブカルチャー的要素が強い。ある意味では「アダルトコンテンツの時代を築いたツール」だ。子どもの教育に悪いとかその手の話はさておき、雑誌やビデオあっての「今」なので、衰退は言葉に言い表せぬ悲しさを覚える。
V字回復に困難を極める業界であるが、なければないで寂しい。それに雑誌の仕事がなくなれば演者にも影響をもたらすと思うと、形を変えながらでも独自の文化をぜひ守り続けてほしいと、勝手ながらに思ってしまうのだ。
【プロフィール】
たかなし亜妖/2016年にセクシー女優デビュー、2018年半ばに引退しゲーム会社に転職。シナリオライターとして文章のイロハを学び、のちにフリーライターとして独立する。現在は業界の裏側や夜職の実態、漫画レビューなど幅広いジャンルのコラムを執筆中。