父の遺言「愛人に全財産5000万円を渡す」 疎遠だった本妻が涙ながらに起こした「ドロ沼裁判」の意外な末路

遺留分がある限り「全財産を愛人へ」は実現しない!

   日本の民法は「遺言の自由」を認めながらも、家族の最低限の取り分を保障している。配偶者と子どもには、法定相続分の半分にあたる「遺留分」がある。これを侵害した遺言に対しては、侵害額の返還を請求することができる。

   つまり、Aさんのように「愛人に全財産を遺す」としても、遺留分を侵害している限り、すべてを愛人が得ることは不可能である。愛人は法定相続人ではないため、遺留分請求があれば一部を返還しなければならないのだ。

   相続トラブルの多くは、感情的な遺言や不公平な贈与が原因だ。まず、遺言を作成する際には、遺留分の仕組みや相続税への影響を把握することが不可欠。次に、遺言の存在や内容を家族に事前に伝えて、意図を説明しておくことも重要だ。

   今回のケースのように、突然、「愛人に遺産を残す」と知らされれば、家族が強い不信感を抱くのは当然だ。最後に、弁護士や税理士など、複数の専門家の助言を受けることもおすすめしたい。

   これら3つの備えを実行することで、軋轢を最小限に抑えて、法的にも感情的にも納得できる遺言につながるだろう。



【プロフィール】
石坂貴史/証券会社IFA、AFP、日本証券アナリスト協会認定 資産形成コンサルタント、マネーシップス運営代表者。「金融・経済、住まい、保険、相続、税制」のFP分野が専門。

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