戦線拡大する中国総領事・斬首投稿問題 駐日米大使、台湾高官も「参戦」

   高市早苗首相による台湾有事をめぐる国会答弁について脅迫とも取れる発言を行い、後に削除していた中国の薛剣(せつけん)駐大阪総領事をめぐる批判が各方面から相次いでいる。

  • 投稿削除後も波紋は広がり続けている
    投稿削除後も波紋は広がり続けている
  • 駐日米大使も「斬首投稿」に言及
    駐日米大使も「斬首投稿」に言及
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  • 駐日米大使も「斬首投稿」に言及

「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやる」

   薛氏の投稿は、朝日新聞デジタルによる「高市首相、台湾有事『存立危機事態になりうる』 武力攻撃の発生時」との記事に反応したもの。記事では高市氏が2025年11月7日の衆院予算委員会で、日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」にあたる具体例について、台湾有事を挙げたことを伝えていた。

   薛氏は8日、この記事を引用すると、「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟が出来ているのか」(原文ママ・以下同)とし、怒り顔の絵文字を添えた。

   薛氏は9日夕方までに投稿を削除した一方で、「中国内政への干渉、国家主権の損害、台湾両岸統一の妨害などは一切許さい」(原文ママ)などと主張。このほか、自身の主張を支持するような投稿をリポスト(拡散)している。

「現代の文明社会において到底容認できるものではありません」

   薛氏の主張には、各国の関係者からも批判が相次いでいる。

   駐日米国大使のジョージ・グラス氏は10日、薛氏による投稿のスクリーンショットを添え「再び本性が露呈した」と批判。

   薛氏が6月、ナチス・ドイツとイスラエルを同一視する投稿をして波紋を広げていたことについて「ほんの数カ月前、中国の薛剣・駐大阪総領事はイスラエルをナチス・ドイツになぞらえたばかりだ」と振り返り、「今度は、高市首相と日本国民を脅しにかかっている」。

   「中国政府は『良き隣人』を口癖のように繰り返すが、全く実態が伴っていない。いい加減に、その言葉通りの振る舞いを示すべきではないか」とした。

   台湾の国家安全会議の呉釗燮(Joseph Wu)秘書長も同日、Xを通じて日本語で薛氏を批判した。

「日本に駐在する中国の外交官が日本に対して発した恐喝的な言論は、すでに外交官としての一線を著しく越え、現代の文明社会において到底容認できるものではありません。私はこれを強く非難するとともに、こうした劣悪な行為を嫌悪します」

   共同通信は、台湾総統府の報道官も薛氏を批判していると報じた。外交上の礼節から逸脱していると指摘したという。

「日本政府が『抗議』しただけで済む問題ではない」

   国内の関係者からも、薛氏への批判が上がった。

   中国出身の評論家で、日本維新の会の石平参院議員は、「このような暴言を吐く外交官は、まさしく野蛮国家のヤクザ外交官。文明国家の日本は、そんな国と『戦略的互恵関係を構築する』云々とは、最初から無理な話であろう!」と怒りをあらわにした。

   続く投稿では、「この前代未聞の暴言と恫喝にたいし、日本政府が『抗議』しただけで済む問題ではない」とした上で、「最低限、このヤクザ外交官を日本から追い出さなければならない。まもなく開催される参議院外交防衛委員会で、私はそれを徹底的に追及するつもりだ!」とつづった。

   産経新聞は11日付の社説にあたる「主張」に、「『首相斬首』の投稿 暴言の中国外交官追放を」の見出しをつけた。本文では、薛氏について「日本駐在の資格はなく、中国の品格と国威も損なった。中国政府は総領事を更迭し謝罪してもらいたい」とした上で、国外退去処分も考えるべきだとしている。

中国外務省は薛氏を擁護

   一方、中国外務省の林剣副報道局長は同日の記者会見で、高市氏の答弁について、日本側に厳正な申し入れをして抗議したことを報告。

   共同通信によると、薛氏の発言については、「台湾への武力介入を言い立てる危険な言論に対するものだ」として擁護する姿勢を見せている。

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