高市早苗首相が国会で、台湾有事が「存立危機事態になり得る」と発言したことが大混乱を招いている。問題の発言を引き出す質問をした立憲民主党の岡田克也衆院議員に非があるとして、高市首相を擁護する声も浮上するなど、その是非を巡る議論はカオス状態に。X(旧Twitter)では、「発言撤回」がトレンドワードになり、「撤回しろ」「いや、するな」と賛否が分かれた。約2か月前に、他人のせいにするのは「リーダー失格」と発していた高市首相は正念場を迎えている。杉村太蔵氏「聞く方も聞く方」問題の発生源は2025年11月7日の国会質問だった。岡田議員から、日本が集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」について、過去の発言との整合性を問われた高市首相は、「やはり戦艦を使って、そして武力行使を伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースであると、私は考えます」と答えた。歴代首相が明言しなかった内容に踏み込んだ見解だった。この答弁に即反応したのが、中国の薛剣駐大阪総領事だった。8日、X(旧Twitter)に「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と過激な文面を投稿し、騒ぎは拡大。中国外務省は13日、高市首相に国会答弁の修正と撤回を要求すると、自国民に対して日本の渡航自粛を呼びかけたほか、日本の水産物を事実上の輸入停止とするなど、経済的なカードを切って揺さぶりをかけている。騒動をめぐり、首相に質問をした岡田議員側に責任を転嫁する意見も一部から出た。16日放送のTBSのバラエティー番組「サンデー・ジャポン」に出演した元衆院議員の杉村太蔵氏は高市首相の発言を「言う方も言う方」と苦言を呈した上で、批判の矛先を岡田議員にも向けた。「聞く方も聞く方で、どういう状況だったら武力行使をするか、これ、敵国のスパイからすると、最も欲しい情報じゃないですか」タレントのデヴィ夫人もXに、「非難一色だが、今回の火種は立民・岡田議員の配慮無き質問」と投稿。高市首相を擁護し、岡田議員を批判した。早大名誉教授「誰かのせいだと思い込みたいのだろうね」だが、これらの擁護論に対してSNSでは「あの安倍晋三・菅義偉・岸田文雄ですら、台湾有事についてはちゃんとテンプレ答弁できてたのに」といった反論も目立つ。米ニュース雑誌「TIME」は「高市氏の発言は中国の怒りを招いた」と報じるなど、海外メディアもこの問題を取り上げているが、岡田議員が原因だとの記述は見られない。池田清彦早大名誉教授はXに、「高市に拍手喝采を送っている人の大半は、自分の商売が成り行かなくなった時にも、やっぱり高市を支持していて、高市以外の誰かのせいだと思い込みたいのだろうね。首が回らなくなっても、中国のせいなので、中国を成敗せよという話に乗りそうだ。そうやって戦争はバカが後押しして始まるわけだ」などと投稿。高市首相を擁護する声を批判した。18日、北京で外務省アジア大洋州局の金井正彰局長が中国外務省の劉勁松局長と会談した。ポケットに両手を突っ込んで対応する中国側の態度と、うつむき加減の金井局長の姿が映し出され、SNSでは物議を醸している。高市首相は総裁選に合わせて9月下旬、ウェブメディア「NewsPicks」の動画で、リーダー論について語っていた。落合陽一氏との対談で、石破茂前首相について「政策の打ち出しが弱かった」と指摘。さらに「最終的な責任者が、政調会長のせいだとか、例えば政治資金問題を起こした議員がいるからとか、経営のトップが社員のせいだと言ってたら、これはリーダー失格です」と語っていた。自らの言葉で招いた日中関係のこじれをどのように解決するのか、早くもリーダーとして手腕が問われている。
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