スポーツ観戦の魅力は、会場でしか味わえない迫力や一体感にある。だが、熱が入る場所だからこそ、観客の「ひと言」が周囲の空気を変えてしまうこともある。山内亮介さん(仮名・20代)は、彼女と訪れたバスケットボールの試合で、思いがけない場面に遭遇したという。盛り上がる会場に響いた舌打ちと落胆の声山内さんはこれまでにも何度が観戦しており、「生で見ると全然違うよ」と彼女に話していた。会場に入った直後、彼女は「すごい、わくわくするね」と目を輝かせていたという。試合は序盤から接戦で、観客も大いに盛り上がっていた。しかし後半、ある選手がミスを重ねた場面で、近くの男性が舌打ちをした。「しかも、『今日、ひどいな』と言うんです。シュートを外した瞬間も『あ~』と落胆した声をあげていました。『ミスばかりならベンチに下げろ』という言葉も聞こえました」山内さんは気になりながらも、彼女に楽しんでもらいたい思いから試合に集中しようとしたそうだ。女性が振り返り観客席が静まり返る「その言い方、やめてもらえますか」しばらくすると、その男性のすぐ前に座っていた女性が、耐えかねたように振り返ったという。「女性は男性に向かって、『その言い方、やめてもらえますか』と注意したんです。たぶん、その選手のファンだったんだと思います」しかし男性は「悪口じゃない。事実を言っているだけだろ」と引かず、言い合いに発展。盛り上がる会場とは対照的に、その一角だけ空気が急に重たくなった。「周囲が一瞬で静まり返りました。彼女も『スポーツ観戦って、怖い人もいるんだね』と言っていて、誘った側として、なんだか申し訳なくなりました」本来なら追い上げムードで客席が沸く時間帯。しかし、一度冷えた空気はすぐには戻らず、山内さんは最後まで落ち着かなかったという。後日、別の試合に彼女を誘った際は、何事もなく楽しめたそうだ。「試合後に、『また行こうね』と笑ってくれたのでホッとしました。一人の言葉で雰囲気がここまで変わるのか、とあの日は本当に驚きました」
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