過酷な労働環境から精神疾患を発症し退職を余儀なくされたとして、千葉県の児童相談所(児相)の一時保護所の元職員・飯島章太さんが、県に対し未払賃金など約1200万円を求めていた訴訟で、2026年3月23日に東京高裁で和解が成立した。和解条項には解決金のほか、児相職員の労働環境改善に努めることなども盛り込まれている。
飯島さんの弁護団は同日の会見で、和解内容を「労働基準法その他に則れば当然」とする一方で、「その当然のことを認めさせたことに高い意義がある」と評価した。
千葉県の改善の姿を「ぜひ見守っていただけたら」
飯島さんは、19年4月に児童指導員として市川児童相談所の一時保護所に配属された。長時間労働をはじめとした過酷な労働環境から精神疾患を発症し、21年11月に退職。飯島さんによると、昼休憩時間も働いていたほか、休憩扱いだった夜勤時の仮眠時間も、子どもの居室内もしくはその前の廊下で寝るよう指示され、十分に休むことはできなかったという。
その後、22年7月21日に千葉地裁に提訴。25年3月26日の千葉地裁判決では、飯島さんの訴え通り、仮眠や昼休憩時間が労働時間として認められた。さらに、県の安全配慮義務違反も認定され、県に賃金と慰謝料の約50万円の支払いを命じた。これを受け、県は即日控訴。その後、26年3月23日に和解が成立した。
飯島さん側と県が合意した和解条項には、解決金50万円の支払いのほか、県が努めることとして以下の内容が盛り込まれている。
「児童相談所職員が専門職としての役割を全うし、保護された児童の権利と尊厳を守るため、職員の労働環境改善に努める」
「児童相談所の全職員について休憩時間(いわゆる仮眠時間を含む。以下同じ)の実態の把握に努め、児童相談所職員の休憩時間が業務から完全に開放された状態として確保されるよう、勤務体制の見直し、代替人員の配置、休憩場所の整備等、必要な措置を講じることに努める」
「休憩時間の実態の把握の結果、未払い賃金の存在が判明した場合には、対象職員に対し、速やかに未払賃金を支払う」
また、児相職員へのガイドラインに基づいた研修の実施や、適切な職員配置の実施も明記された。
弁護団長の船澤弘行弁護士は、「考えてみれば当然の事柄ばかりです。労働基準法その他に則れば当然のことですが、その当然のことを認めさせたことに高い意義があると考えております」とコメントした。
飯島さんは、千葉県の改善の姿を「ぜひ見守っていただけたらいいなと思います」とした。さらに、現在児相で働く職員に向けて、「どうか、子どもを大切にしたいと願う自分自身のことも、同じぐらい、あるいはそれ以上に大切にしてほしいです」と伝えた。
飯島さん「(県が)ちゃんとこの裁判に向き合わない限り...」
飯島さんはこの和解について「やれること全てやりきった」と評価する一方で、弁護団は県の姿勢について、「千葉県としては(職員の労働環境改善を)すでに行っており、その努力の延長をこれから行っていくという姿勢だと理解しています」とする。
また、職員への研修の実施についても、飯島さんは、県議会でどのように研修を実現していくか質問があった際に具体的な回答がなかったことに触れ、「研修が果たしてガイドラインに沿った中身であるのか、引き続きチェックが必要だと思っているので、具体的な実行の時期についてはおそらくこれからなのかなと思います」とした。
こうした県の姿勢について、弁護団は、「こちらから求めた改善の要望について了解をもらえておりますので、千葉県としても一定程度問題意識を持って、改善をしていこうという意欲はあるのではないか」とコメント。飯島さんも、「県としても、行政としての体裁もあるのか、この裁判を受けて具体的に『こういう政策をします』とは言いづらいと思う」と、一定の理解を示した。
そのうえで、
「ただ、(県が)ちゃんとこの裁判に向き合わない限り、休憩時間のことも――例えば労働から完全に解放された状態というものをちゃんと千葉県が休憩時間として認識しているのかとか――、その認識の部分がどうしても歪んでしまう可能性があるんです。なので、『この裁判をきっかけに政策としてやりました』と言わなくてもいいですが、ちゃんと向き合って、認知が歪まない状態で研修も休憩時間もやってほしいなという希望はあります」
と、話した。
県児童家庭課は23日、J-CASTニュースの取材に、「元職員の方と最後まで争うわけではなく、和解という形で合意が得られたということは非常に良かったと考えている」とコメント。熊谷俊人知事も「和解という形で解決が図られたということは知事としても前向きに捉えている」とするコメントを出しており、これを踏まえて「県としても、児童相談所の職場環境の改善は非常に重要なことであると思っていますので、和解を受け止めた上で、県としてできることを一つ一つやっていきたいというふうに考えております」とした。