「一番みっともない」おばあさんのひと言で車内が静まり返った
男性の声は、赤ちゃんよりもはるかに車内へ響いていた。周囲の乗客も呆れた様子だったようだ。しかし、誰も声を上げられなかったという。やがて、母親は小さく頭を下げた。
「すみません......」
そして席を立とうとした瞬間――。前の座席から、おばあさんが「ひょい」と顔を出した。
「あんたね、自分で自分の機嫌もとれないおじさんが、一番みっともないよ」
車内が静まり返った。さらに、おばあさんは続けた。
「赤ちゃんより、あんたのほうが何倍もうるさいわ!」
そのひと言に、男性は一瞬で黙り込んだという。そして、おばあさんは、母親へやさしく声をかけた。
「気にしないで。あかちゃんかわいいわね。幸せな時間をありがとう。ここに座ってなさい」
母親は、涙をこらえるような表情で頭を下げた。一方の男性は、新幹線を下りるまで下を向いたまま一度も顔を上げることはなかった。
「おばあさんの言葉は厳しかったですが、あの場で言ってくれた人がいて本当によかったと思いました」
子どもの声に対する感じ方は人それぞれだ。しかし、公共交通機関では、利用者同士が配慮しながら利用している。子育て世代への理解が求められる中、相手を一方的に追い詰めるのではなく、お互いに思いやる姿勢が大切だ。