電車内でのせきには気を付けたい。厚生労働省は、「咳エチケット」の実践を呼びかけており、人が集まる場所では、マスクの着用や口元を覆うなど、周囲への配慮が重要だと示している。鈴木拓也さん(仮名・30代)は、せきをしている人に対して、あからさまな嫌がらせとも受け取れる行動に遭遇した。せきをした女性に向けて突然のせき払い鈴木さんが乗った電車は、座席はほぼ埋まっていたものの、立っている人は少ない程度の混雑だった。鈴木さんはすぐに乗り換える予定だったため、ドア付近に立っていたという。ロングシートの端には、30代くらいの女性が座っていた。女性は大きめのマスクを着け、スマートフォンを見ていたという。その隣には、40代くらいの男性が座っていた。しばらくすると、女性がせきをし始めた。「車内は静かだったので、せきの音は少し目立っていました。周りの乗客も何となく女性のほうを見ていたように思います」その直後だった。隣に座っていた男性が、女性のほうを向きながら大きなせき払いをし始めたのだ。「女性のせきが気になったり、不快に感じたりする気持ちは理解できるんです。でも、その反応はあまりにも露骨でした」男性は言葉を発することなく、女性へ向けるように何度もせき払いを繰り返した。さらに、女性のせきを真似するような仕草まで見せたという。「車内の動きが一瞬止まったような感じでした。周りの人も様子を窺っているようでした」「次は自分に向けられるのでは」入り口付近で感じた緊張次の駅へ近づくと、女性は降りる準備を始めた。しかし、それよりも先に男性が立ちあがった。男性は降車口に向かって歩き始め、その先には、ドア付近に立っていた鈴木さんがいた。「迷惑な人だな、不快だなと思っていました」男性がすぐ隣まで来た瞬間、不安がよぎったという。「今度は私に何かしてくるんじゃないか――と急に緊張しました」駅に到着するまでのわずかな時間が、いつもよりも長く感じられたようだ。結局、男性は何も言わず、そのまま電車を降りていった。「男性が降りた後は、不快だったというより、『ようやく終わった』という安堵の気持ちが大きかったです。ほんの数分の出来事でしたが、今でも印象に残っています」せきの原因は外見からは分からない事情を抱えているケースもある。公共交通機関では、それぞれに事情があることを想定し、周囲への配慮を忘れないことが大切だ。
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