「Twitterを返して」熊本地震の重要情報が埋もれるXがダメすぎ デマ止まらずインプレゾンビが拡散する始末

   2026年7月28日、最大震度7を観測した令和8年熊本地震。被災地の様子を追おうとX(旧Twitter)を開いた人々の口から漏れたのは、「Twitterを返して」という嘆きだった。

   東日本大震災のときには、ライフラインが寸断されるなか、安否や交通・電力の情報、行政の発信、被災地の生の声がTwitter上を駆けめぐり、防災インフラの一部として働いていたのに......という嘆きである。

  • 「Twitter」の頃は、災害時の情報伝達・共有ツールとして有用だったが
    「Twitter」の頃は、災害時の情報伝達・共有ツールとして有用だったが
  • 2016年の熊本地震では、阿蘇大橋が崩落した(編集部撮影)
    2016年の熊本地震では、阿蘇大橋が崩落した(編集部撮影)
  • 「Twitter」の頃は、災害時の情報伝達・共有ツールとして有用だったが
  • 2016年の熊本地震では、阿蘇大橋が崩落した(編集部撮影)

東日本大震災のときとは、収益の設計が変わった

   今回、肝心の情報は「おすすめ」の奥に沈み、代わりに人工地震説や、被災者の家族を装った投稿、生成AIによる偽の爆発映像が画面を覆った。

   とりわけ際立ったのは、生成AIの回答を根拠に、本物の可能性が高い現場映像まで「AIの偽物だ」と決めつけて拡散する動きだ。

   偽物を本物と偽るだけでなく、本物を偽物と決めつけて潰す----真偽の最後のよりどころだったはずのAIが、逆に土台を掘り崩しはじめている。

   なぜXはここまでデマに弱くなったのか。

   2022年のイーロン・マスク氏による買収以降、表示の主役は、新しい順に並ぶタイムラインから、アルゴリズムが選ぶ「おすすめ」欄へ移った。

   この設計は災害の即時性と相性が悪い。X日本法人の松山歩代表自身が「フォロー中」「新しい順」を勧めたが、これは運営が「おすすめ」が災害に不適合だと認めたようなものだ。

   緊急時ぐらい初期表示を切り替えられないのか、というユーザーの憤りはもっともである。

   さらに2023年、表示回数に応じて投稿者へ収益が払われる仕組みが加わり、「見られればカネになる」構造が生まれた。

   災害が閲覧数を稼ぐ素材と化す。

   「インプレゾンビ」がデマの拡声器と化す土壌は、この収益設計そのものにあるのではないか。

   もうひとつ、買収の翌年に無料APIが投稿のみ月1500件に絞られたことも大きな要因かもしれない。

   このあおりを受けて、データ取得や大量投稿ができなくなり、ネットで地震情報を得るための有益な情報源とされていた「緊急地震速報bot」をはじめ、多くの防災botが運用を終えた。

   無料だったからこそ、採算度外視の善意のbotが成り立っていたのだが、その前提が崩れたのだ。

   同じころ、研究者に月1千万件まで無料でデータを開いていた「アカデミックAPI」も実質廃止され、誤情報を検証してきた研究者が割を食った。

   稼ぐ投稿は呼び込む一方、速報botもデマを追う研究者も締め出される----この設計思想こそ、いまのXの惨状を招いたように見える。

姉妹サイト