一分一秒を争っているかもしれないのに
スクランブル交差点で信号待ちをしていると、左手から赤色灯をつけた救急車が近づいてきた。
「歩行者用信号は赤だったので、このまま救急車が通り過ぎるんだと思って見ていました」
ところが、救急車が交差点に差しかかったところで、歩行者用信号が青に変わった。
坂口さんや周囲の歩行者は、その場にとどまったのだが、外国人観光客と思われる大勢の人たちが、四方から横断歩道を渡り始めたという。
「救急車から『道を空けてください』という大きな声が聞こえました。それに気づいて渡るのをやめた人はいましたが、そのまま歩き続ける人もいました」
さらに坂口さんを驚かせたのは、交差点の中央で写真を撮ったり、ライブ配信を続けたりする人がいたことだった。
歩行者が行き交うなか、救急車は、すぐに交差点を通過することができなかったようだ。
「見ているこちらがイライラしました。救急車が向かう先には、搬送を待っている人がいるかもしれません。一分一秒が命を左右する状況かもしれないんです。もし自分の国で、自分の家族が救急車を待っていたらどう感じるんだろうと思いました」
やがて、歩行者が途切れ、救急車は交差点を抜けていった。
多くの観光客が訪れる渋谷では、街を歩いたり、写真や動画を撮ったりすることも旅の楽しみのひとつだろう。しかし、観光地であっても、そこで生活する人や働く人がいることに変わりはない。救急車両が近づいている場合には、速やかに進路を空けるなど、周囲の状況に応じた行動が求められる。