ランドセルを触られ「何を言っているのか分からなかった」
その後も、似たような出来事が何度か続いた。
「娘に悪意をもって近づいているわけではないことは、私にも分かっていました。ランドセルを背負った日本の小学生が珍しくて、かわいいと思って写真を撮りたかったのだと思います」
突然カメラを向けられるだけでなく、なかにはランドセルに手を触れたり、娘に話しかけたりする観光客もいたという。
「早口だし、日本語じゃないから何を言われているのか分からなくて怖かった」と宮本さんに話したそうだ。
同じような経験が続いたことで、娘はやがて観光客の多い道を避けるようになった。
「少し遠回りになっても、裏道を通って帰るようになりました。自分が住んでいる街なのに、子どもが観光客を避けないとならない状況は、親として複雑でしたね」
その後、宮本さん一家はその地を離れ、首都圏へ戻った。
それから何年も経ったが、娘には当時の出来事が今も印象に残っているという。
「中学校の面談で先生から、『将来は観光地に住む人の日常をサポートする仕事がしたい、と話していましたよ』と聞いたんです。あの経験が、娘のなかにずっと残っているんだと思います」
観光地には、旅行者にとって魅力的な風景がある一方で、そこで生活を送る人たちもいる。珍しい光景で出会ったとしても、相手の気持ちに配慮する必要があるだろう。