夏休みが終わり、新学期に向けて希望を燃やす子もいれば、そうでない子もいる。そんな子にも居場所があると、葛西臨海水族園(東京都江戸川区)が公式Xでメッセージを送り、反響を呼んでいる。
「きえないで 休んでいい にげていい あなたにいてほしい あなたに生きていてほしい」。2026年8月31日17時のメッセージでは、こう切り出した。
「こんな優しい方が」「思いがどうか届きますように」
末尾には、19年から園長を務めている錦織一臣さん(58)の名前があった。人の命について、水族館がメッセージを出すのは異例だ。
メッセージは続いて、28年に水族園のリニューアルがあるとして、こうつづった。
「ずっと見にきてほしい きえないで きて この世界は、この星は、ほんとうは広い もっとずっと だれもおってこられないくらい広い ずっとずっと あなたの声に、あなたの思いに、よりそうひとが きっといるから」
そして、「にげていい いまは きえないで きて 生きて きて この星の生きもののふしぎをあなたはどれくらいしったの? あなたに見てほしいこの星の生きものがたくさんいるんだよ」と結んでいる。
新学期を目前にした異例の呼びかけだけに、大きな反響を呼んだ。9月2日昼過ぎ現在で、17万件以上の「いいね」が集まっている。
「こんな優しい方がいらっしゃるのか」「行くところがあるというのは救いになる」「思いがどうか届きますように」といった声が届き、今現在つらい思いをしているという大人からの告白も相次いだ。
「今パワハラと言うかいじめのようなことをされていて、ボロボロと泣いています これ以上ダメだと思った時は、思い切って勇気を出してお休みしてみよう」
「娘が明日学校に行かないだろう動きに親としてうまく対応できず、涙していた時にこの投稿を見て、少し元気になりました。ありがとうございます」
「イワトビペンギン君にいつも助けられてます。苦しい時期もあったけれど、ペンギン君と色々な景色を見に行くために頑張ろうと思います」
中高生など若者の自殺が増え、「何か発信できないか」
葛西臨海水族園は、9月1日午前8時40分にも公式Xを更新し、錦織園長名でこうつづった。
「夜のとばりを抜け出して 今日は9月1日 あなたがもし眠れない夜をすごしたのなら あなたがもしこれからあの場所へ行くくらいなら・・・ と思ってしまった朝を迎えたのなら どこへも行き先が思いつかないのなら 水族園を思い出して 9月1日、朝9時30分から開けておくから」
この投稿も、反響を集めて、3万件以上の「いいね」が付いている。
投稿に至った経緯について、同園の錦織一臣園長は2日、J-CASTニュースの取材にこう明かした。
「動物園、水族館の都立5園のグループで8月に集まったとき、『最近、中高生を中心に若い人の自殺が増えている』と話題になりました。何か発信できないかとの話になり、葛西臨海水族園としても同意して、メッセージ作りを進めていました。新学期に入って、学校へ行きにくいと思ってしまう子もいると思います。『消えてしまいたい』と悩んでいる大人の方にも広く届いてほしいです」
メッセージ作りに当たっては、園内の職員に意見を聞いて進めたという。
「職員の中には、子どものころ不登校だったという人もいました。うつ病を経験して、死にたいと思った職員もいたと聞いています。居場所がない子どもたちなどに思いが届くように、こうした体験を持つ職員に文章を直してもらいました」
メッセージが反響を集め、1日の開園時には、「投稿を見て初めて来園しました」「世界が広がって見えました」と水族園の案内カウンターに声をかけてくる人もいたという。
「来園する子どもたちは、グループで来るなど元気な子が多いです。そうでない子は、なかなか来ないと以前から思っていました。病気や障害などがあって、来たいけど来られない人には、移動水族館もやっています。生き物を見てもらうことしかできませんが、その機会を居場所として利用してほしいです。1日だけでも、『消えたい』から逃れて、違う選択もあると気付いていただければ。園長名を出したのも、届けたいのは1人1人であり、『あなたに』との思いを込めました。今後のことは、決まっていませんが、状況に応じた投稿はしていきたいと思っています」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)