自衛のためなら戦争をするのか。それとも、自衛であっても戦争はしないのか――。憲法9条をめぐる議論を、主権者自身の選択として考えようとする「市民による<非戦・交戦>対話プロジェクト」が始まる。発起人らが2026年9月25日、国会内で記者会見を開き、約60人の市民による熟議を経て、「非戦」と「交戦」の2つの改憲案を示す計画を発表した。27年1月には、1万人規模のオンライン「模擬国民投票」を目指す。ルールが曖昧なままでは、時の政権が解釈を拡大する余地が生まれる発起人は法哲学者の井上達夫氏、ジャーナリストの今井一氏、政治経済評論家の古賀茂明氏、映画作家の想田和弘氏、弁護士の水上貴央氏、楊井人文氏の6人。会見には今井、水上、楊井の3氏と、呼びかけ人の一人で「辺野古」県民投票に関わった元山仁士郎氏が出席した。発起人らが問題視するのは、憲法9条の文言を変えないまま、自衛隊や武力行使についての解釈が積み重ねられてきた「解釈改憲」の現状だ。水上氏は、同じように「9条を守る」と言っていても、自衛隊は違憲と考える人、個別的自衛権までは認める人、集団的自衛権も容認する人では、それぞれでその中身が違うと指摘。ルールが曖昧なままでは、時の政権が解釈を拡大する余地が生まれると訴えた。具体的には、「主権者が結局何も言えないまま、どんどん(政権が)できることが広がって、自衛隊が軍拡されて戦争に持って行ってしまうかもしれないという状況にある」と説明した。楊井氏は、現行の条文をどう読むかという議論をいったん脇に置き、まずは「自衛のためでもあっても戦争をするのか、しないのか」という問いに主権者が答える必要があると説明した。では、「熟議」の結果、現行の9条を変えない案が出る可能性はあるのか。今井氏は「ありえない」と説明。自衛戦争を認めるにせよ、認めないにせよ、その立場が誰にでも分かるよう明記するには、9条を改める必要があるとの考えだ。ただし水上氏は、市民案を直ちに憲法の条文案にするとは限らず、まずは解釈の余地をできるだけ残さない、平易で具体的な説明を示したいと説明した。57人が「熟議」に応募、最年少は高校1年生今回のプロジェクトで行われる熟議には、会見当日の朝までに57人が応募。60~70代が7~8割を占める一方、20~30代もおり、最年少は高校1年生だった。男女比はほぼ半々で、居住地は北海道から沖縄まで広がるという。今井氏によると、承諾書が未返送の応募者も12人おり、最終的な参加人数は変わる可能性がある。プロジェクトは10月から11月にかけて、全7回のプログラムを予定する。最初の3回は今井氏、想田氏、井上氏による講義と質疑応答。その後、全体や地域別で話し合い、11月12日に最後の全体熟議を行う。地域別の話し合いのうち1回は対面で実施し、過程は録画・録音して公開する予定だ。熟議を踏まえ、12月8日に2つの市民案を発表する予定。記録を公開した上で、27年1月10~17日にオンラインの模擬国民投票を行い、広く意見を募る。目標は1万人。結果を公表し、国会の憲法審査会などに、憲法改正のための国民投票の前段階にあたる「予備的国民投票」の実現を働きかける構想も示した。プロジェクトには、会議や記録作成、参加者の交通費など、約300万円の費用を見込んでおり、そのうち250万円をクラウドファンディングでまかないたいとしている。(J-CASTニュース編集委員兼副編集長工藤博司)
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