学生がひと言「こちらからどうぞ」
小野寺さんが声をかけるべきか迷っていると、男性の斜め向かいに立っていた学生が動いた。
「女性のほうを向いて、『こちらからどうぞ』と言いました」
学生は体を半身にして、高齢女性が通れるスペースをつくったそうだ。
「女性は『ありがとう』と言って、その横を通っていきました。学生は女性が通り終わると、何事もなかったように元の向きに戻ったんです」
男性に注意したり、文句を言ったりしたわけではない。困っている女性に気づき、自分が少し動くことで通り道をつくっただけだ。その一連の動きが、小野寺さんには印象に残ったという。
「私は『注意したほうがいいかな』とずっと考えていたのに、その学生が迷う様子もなく動いていました。すごく自然だったんです」
知らない人に注意するのは勇気がいるし、トラブルになるリスクもある。小野寺さんは、必ずしも相手に直接言うことだけが方法ではないと思えたそうだ。