部下の成長を止める上司のクセ 「自分でやった方が早い」管理職が身につけたい「仕事の任せ方」

任せる前に、すり合わせたい3つのこと

   一方で、「任せたのに期待どおりにならなかった」という問題にも注意が必要です。

   上司は十分に説明したつもりでも、部下は完成形を理解していない。途中で相談してよいのかわからず、一人で抱え込んでしまう。こうした行き違いを減らすため、最初に3つのことをすり合わせましょう。

   1つ目は、仕事の目的と完成の基準です。

   「会議資料を作って」だけでは、情報を網羅すべきなのか、意思決定に必要な論点を絞るべきなのかがわかりません。

   誰が使い、何を決めるための資料なのか。どの状態になれば完成なのか。ここまで伝えることで、部下も優先順位をつけやすくなります。

   2つ目は、自分で判断してよい範囲です。

   資料の構成は自由に考えてよいが、金額の変更には承認が必要。社内の情報収集は進めてよいが、顧客への連絡前には確認する。境界が明確であれば、部下は安心して動けます。

   3つ目は、途中で確認するタイミングです。

   締め切り当日になって初めて確認すれば、修正の時間が足りなくなるかもしれません。構成ができた段階、関係者の意見がそろった段階など、手戻りを小さくできる時点で確認します。

   任せる仕事が難しいほど、途中で話す機会を設ける。この準備が、上司にとっても部下にとっても負担を減らします。

   空いた時間で、管理職は何をするのか

   仕事を任せる目的は、部下の育成だけではありません。管理職自身が、次の仕事に取り組む時間をつくることにもあります。

   目の前の資料を完成させるだけで一日が終わってしまえば、顧客の変化を捉えることも、部門を越えた課題に取り組むことも難しくなります。

   部下に任せて生まれた時間で、次の提案を考える。関係部署との協力を進める。チームの仕事の進め方を改善する。管理職には、そうした役割も期待されています。

   部下が自分の手を離れて仕事を進められるようになることは、管理職にとって大切な成果です。その成果が、自分自身の新たな経験にもつながっていきます。

   まずは、いつも自分が引き取っている仕事を一つ選んでみてください。

   その仕事のどの部分なら任せられるか。何を説明し、どこで確認すれば進められるか。そこまで考えてから、部下に声をかけてみましょう。

   「自分でやった方が早い」と感じたときこそ、仕事の任せ方を見直す機会なのかもしれません。



【筆者プロフィール】
高城 幸司(たかぎ・こうじ)/株式会社セレブレイン代表取締役社長。1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)、『決定版 「リーダーシップのコツ」をマンガでマスターできる本』(Gakken)

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