国民民主党の玉木雄一郎代表が、次期衆院選で「51議席以上」を目指す考えをJ-CASTニュースのインタビューで明らかにした。51議席は、予算を伴う法案や内閣不信任決議案を単独で提出できるラインで、2026年2月の前回衆院選に向けて掲げた目標と同じだ。前回は公示前から1増の28議席にとどまり、玉木氏は「当初予定した数字から比べると不本意だが、みんなの力でよくここまで持ちこたえている」と総括していた。改めて同じ目標に挑むことになる。
将来の連立参加は否定しなかったが、党の規模が小さいままでは「数合わせに使われるだけ」だとして、まず党の「自力」をつける必要性を強調した。インタビューは全2回。前編は党の歩みや今後の見通しについて聞いた。(聞き手・構成:J-CASTニュース編集委員 兼 副編集長 工藤博司)
現役世代の負担軽減という「新しい政治のフィールド」
―― 20年の結党時は衆参15人でしたが、現在は53人です。6年間で党勢を伸ばした最大の要因は何でしょうか。
玉木: やはり24年秋の衆院選の飛躍が大きかったですね。衆院議員は4倍になりましたが、その後前原誠司さんたちが離党して一度7人まで減りました。そこから28議席になった。毎回、背水の陣なんです。
我々が言い始めて、日本の政治も少し変わりつつありますが、現役世代を重視しよう、社会保険料や所得税、住民税という、働いている人の負担を何とか軽減できないか、という新しい政治のフィールドができたことは大きかったと思います。
今までは、「入ってくる税金は当たり前で、それをどこに補助金で配るか」という話ばかりでした。減税といっても消費税減税しかないようなところに、働いている人が負担している所得税、住民税、社会保険料を軽減することが現役世代を助けるのではないか、と。税を集めて配る側ではなく、払う側の視点に立った政治を、新しい課題として提起できたのは我々の意義だと思います。
「国民民主党を知ってから政治が身近になった」「自分たちの懐の話なんだ」と言われるようになりました。学生を含めて選挙に関心を持つきっかけをつくれたことが、飛躍した一番の原因だと思います。
―― 現役世代に刺さることを言い続けた、ということですね。NHKの26年10月の世論調査によると、国民民主党の政党支持率は2.7%ですが、年齢別にみると、18~39歳5.6%、40代7.8%と、現役世代が高めに出ています。
玉木: そうですね。70代以上が依然としてシャープペンシルの芯みたいになっているのは(70代0.8%、80代以上1.8%)、何とかしなければいけないと思っています。
高市政権と経済政策が「ある意味同質化」
―― 26年2月の衆院選は28議席と1議席増だったものの、比例票は約617万票から約557万票に減りました。「踊り場」に入った、成長が止まった、との見方もあります。
玉木: 成長が止まったというより、我々が言ってきた「103万円の壁」やガソリン暫定税率廃止を、これまでの政権と違って高市政権が取り入れた。その意味では、高市政権と我々の一番の強みであった経済政策が、ある意味同質化しています。「高市さんもやるなら、自民党でいいのではないか」となったことは否めない事実です。石破(茂)さんや岸田(文雄)さんがやらなかったことを高市さんがやって......ここは我々がまさに言ってくれたことを飲んでくれてるわけですから。
―― 20年のインタビューでは、政策は与党に「パクってもらって結構」と話していました(当時のインタビューの話題は「ロックダウン法案」)が、いざパクられると......、。
玉木: まあね......(笑)、これは宿命的に仕方がないところがあります。我々は先手先手で次の政策を出します、未来先取りでやります、でいくしかないですね。
―― その一つが、政府の飲食料品の消費税減税の対案にあたる「現役世代減税法案」ですか。
玉木: みんな消費税減税をどうするかに集中していますが、我々はすでに2年間の減税が終わった後のことを提起しています。 税率を8%に戻すとき、低所得者には「就業者負担軽減支援金」という名の給付金があっても、年収300万円程度以上の人には何もない。インフレで本体価格も上がる中で8%に戻せば、中間層には純粋な増税になります。 そこで、住民税の課税最低限、いわゆる「119万円の壁」を178万円に引き上げ、5万円程度の減税を組み合わせる案を出しました。まだどの党も十分にケアしていない2年後の影響を先取りし、中間層、現役世代の負担を抑える提案です。
―― 以前は「ネットどぶ板」で支持を伸ばした、という話をうかがいましたが、参政党など競合も増えています。SNSの使い方だけでなく、「政策を新しく出す党」ということで差別化するということですね。
玉木: 「103万円の壁」も、まず政策を出したことでネットに広がりました。やっぱりコンテンツが大事です。SNSや広報も大事ですが、何を伝えるのか、誰のための政策なのかを固めて出していく必要があります。その意味でも、ブレずにやっていきます。
我々も与党の一角を占める時が必ず来る
―― 政策で伸びてきた国民民主ですが、今後はどのようにして大きくしていきたいですか。26年9月に投開票された代表選では、28年の参院選で非改選と合わせて40議席を獲得して「参院野党第1党」となり、その後の衆院選以降で政権を担う構想を示しました。今後の3年間を「政権準備期間」と位置付けています。
玉木: 政権を主導的に担えるような政党に成長させていきたいですね。
―― 政権を「担う」(連立政権に入る)のか、「取る」(政権を奪取する)のか......。
玉木: 選挙制度を変えない限り、日本の政治体制は基本的に連立政権だと思います。その中で、我々も与党の一角を占める時が必ず来ると思っています。ただ、その時に小さい数だと結局は数合わせに使われるだけ、こちらの政策実現力が低いままです。それではあまり連立に入る意味がないので、まず我々が自力をつけることが大事だと痛感しています。
「103万円の壁」にしてもガソリンの暫定税率にしても、衆参が与党過半数割れになっていた時(25年7月の参院選~26年2月の衆院選)が、やはり我々の政策実現力が高まったわけです。特に参院では今でも半々ですから、もう少し(与党が過半数を)確実に割っていくということになると、国民民主党の果たす役割が非常に大きくなる。
まず次の参院選で野党第1党を目指します。そのためにも、27年春の統一地方選で700人の自治体議員をつくり、地方に根を張る組織にしたい。現職は416人で、これから選挙に立てる新人候補は現時点(インタビューは10月23日に収録)で243人です。
―― 連立政権に入るとすれば非自民政権を想定していますか。それとも自民主導でしょうか。
玉木: 相手が誰かは今の時点では申し上げられません。ただ、どこと組むにしても、我々がもう少し大きくなり、組織を固めないと飲み込まれてしまいます。政策本位、「対決より解決」の姿勢で一つ一つ政策を進めながら、自力をつけ、政権を担える政党に成長したいですね。
―― 9月30日に日本記者クラブで開いた記者会見では、公明党の連立離脱時に立憲民主党の安住淳幹事長(当時)が首相に担ごうとしたことについて「どこまで真剣だったのかなという気がするし、今バラバラになっている姿を見ると、やらなくて良かったな、ということに尽きる」と話していました。その後の中道改革連合を見ると、確かに乗らなくてよかったですね。あんなに負けるとは......。
玉木: あの渦の中に巻き込まれていたかもしれないわけなので......。あの時も実は最初から申し上げたのは「基本政策の一致がない限りはできませんよ」ということです。「総理になれる」とかって人参をぶら下げられても、我々もともと(20年の合流時に)立憲に加わらなかったのは、安全保障、エネルギー政策、憲法といった国家の基本に関わる政策で一致がないのに、数合わせで一緒になっても、選挙ではまあ有利になるかもしれませんが、長続きしないというのが20年9月の我々の結党のアイデンティティです。ですから、その政策を脇に置いて一緒になると言ったら、結党した意味がないんですよ。
―― 仮に次期衆院選で自民・維新がボロ負けして過半数に少し足らないという局面になり、連立入りを打診された場合、それを受け入れる基準はありますか。
玉木: 先ほど申し上げたように、安全保障、エネルギー政策、憲法観は基本です。加えて、現役世代をしっかり支える政策に転換できるか。納税者の視点を大切にする、透明度の高い政治に変えられるかです。今回(簗和生・前農水相の事案)みたいに、集めた税金を選挙で応援してくれたら付ける、応援しなかったら削るという恣意的で不透明な財源配分をしていたら、日本は発展しません。
シルバーデモクラシー、ある種の利権デモクラシーを変えないと新しい日本はつくれない。どんな形で政権を担うにしても、頑張る人が報われ、現役世代を応援する政策、納税者・生活者の立場に立った政策を強く求めます。
次期衆院選は女性候補35%目標、「50代、60代以上に届くメッセージを」
―― 希望の党時代から数えると、代表を務めてまもなく9年です。先日の代表選で、3年の続投が決まりました。相当な長期政権ですが、「玉木商店」とも言われる状態をどう脱却しますか。
玉木: いつも「次は後継者」だと思っています。リーダーの仕事の一つは次の世代を育てることです。長期政権をやるつもりはなく、とにかく政権を担える政党に育てて、若手に実力をつけてもらいたい。いきなり大臣でなくても、政務官や副大臣として政権の側で権力を担う経験を早くしてもらいたいです。
外から無責任に言うだけでは駄目です。次の世代に引き継ぐときには、与党になれる力をつけて引き継ぎたいです。代表選でもご指摘をいただきましたが、急に組織が大きくなり、ガバナンスや地方組織の整備が遅れていたところは、しっかり足場固めを進めていきます。
―― 25年6月の日本外国特派員協会の会見で、女性支持が少ない理由を質問したところ、政策が女性にとって「理解が難しい」と受け取られる英語表現を使い、批判が出ました。FAQ(よくある質問)のような質問なので、党が置かれた状況によって分析も変化するだろうと思っての質問でした。現在はどう分析していますか。先ほどのNHKの世論調査では、男性の支持率3.7%に対して女性は1.3%でした。
玉木: 調査によるのですが、最近の街頭演説では3割、4割が女性で、子連れの女性も多くなっています。女性の支持は、それほど低くないと思います。年少扶養控除の復活など、街頭演説会場などで積極的に声をかけてくださるのは、むしろ女性の方ですね。
ただ、伝え方や分かりやすさは、もう少し気をつける必要があります。
若い女性にはかなり届いている感じがありますが、50代、60代以上は男女ともに弱い傾向があり、特に年齢が上の女性に届くメッセージが必要なのかなと思っています。もう少し分析が必要です。
―― 内閣府のまとめでは、24年衆院選で国民民主の女性候補と女性当選者の割合はいずれも21.4%でした。22年参院選では約4割。数値目標はありますか。
玉木: 次の衆院選では、女性候補者35%の目標を達成したいですね。
―― ところで、次期衆院選で何人受からせたい、という目標はありますか。
玉木: これはまだどこにも言っていないのですが、今の衆院を見ても、どこの政党も単独で内閣不信任案を出せません。予算関連法案も出せない。さすがにそれではいけないので、最低でも50議席は取りたい。野党第1党を目指すのであれば、100議席以上取ることが必要だと思います。
秘書: (提出者含むと)51。
―― これは結構な伸び幅ですね。
秘書: 今の段階だと(政策の基本方針を示し、予算措置などを定めない)プログラム法案を出さざるを得ないのですが、実際予算に関わる法律を出すという意味でも、やはり次は51議席以上は目指したいですね。
比例31減は「当面の措置」 本丸は抜本改革
―― 与野党による選挙制度改革に関する会合では、衆院比例代表の定数を31減らす案が示されました。どう対応しますか。
玉木: 党内で議論しますが、今回の31減という当面の措置は、私はあまり意味がないと思っています。本丸は、衆院議長の下で1年かけて有識者会議を行い、抜本的な選挙制度改革をまとめることです。
小選挙区比例代表並立制を30年続け、党名を書いてもらえばどんな人でも通ることが政治家の劣化を招いているのではないか、といった弊害も指摘されています。本当に有能な人が政治に入り、厳しい国際社会に立ち向かえる政治、政党、議院内閣制をどうつくるか。その観点からの抜本改革に注力したいですね。
―― やはり政権との距離は注目されるわけですが、国民民主党としては(与党と野党の中間の)「ゆ党」と言われるのは嫌なわけですよね。
玉木: 昨日(10月22日)の憲法審査会で聞いた話を思い出しました。スイスでは10万人以上の署名を集めれば、憲法改正を求める国民投票を発議できるのですが、ある意味スイスは、国民が野党なんですよ。スイスはどの政党も過半数を取っていない構成で、最終的には各党が折り合って政策の合意を作っていきます、その意味では権力のチェックや政策の実現の提案は国民自身がやっている。直接民主主義の国だということもありますが、それを聞いてハッとしました。
我々は、与党でも野党でもなくて、国民の味方なんですよ。 だから国民民主党なんですよ、と思いました。国民が求める政策を実現するため、与党と協力すれば「与党寄り」、政治資金の透明化などで野党と協力すれば「野党寄り」と言われます。でも、ただ国民に寄り添っているだけです。
(後編に続く。10月27日11時30分掲載予定です。玉木氏のウクライナ訪問について聞いています)
玉木雄一郎さん プロフィール
たまき・ゆういちろう 国民民主党代表。1969年香川県生まれ。東大法学部卒。93年旧大蔵省入省。2009年の衆院選で香川2区から初当選し、現在7期目。旧民進党幹事長代理、旧国民民主党共同代表を経て18年9月から同代表。20年9月に分党を経て新国民民主党設立、代表に就任。