「日本中学生新聞」記者、朝日新書の訂正までの経緯...取材で明かす 版元は本人に確認せず、望月衣塑子記者も回答

   朝日新聞出版は2026年11月1日、東京新聞の望月衣塑子記者と思想家の内田樹さんの対談本「常識なき世界を生き延びるために」(朝日新書)について、電子版も含め出荷・販売を中止し、書店の在庫を回収すると発表した。

   望月記者の発言部分に複数の事実関係の誤りがあり、いずれも「日本中学生新聞」を創刊した川中だいじさんについて語った部分だった。川中さんが10月28日に誤りをXで指摘した後、望月記者は同日、謝罪文をXに投稿していた。

   川中さんは29日、J-CASTニュースの取材に対し「謝罪だとは受け止めていない」と語った。17日に版元に連絡してから10日以上経っても望月記者本人から直接の連絡を受けていないという。誤りが生じた経緯についても、版元から詳しい説明がないと話した。

   望月記者と版元も11月2日、それぞれJ-CASTニュースの取材に回答。望月記者は直接の説明やおわびができていないとしたうえで、「私から速やかに働きかけるべきでした」と説明した。版元は制作段階で川中さん本人への事実確認をしていなかったと認めた。

  • 望月衣塑子記者と思想家の内田樹さんの対談本「常識なき世界を生き延びるために」(朝日新書)
    望月衣塑子記者と思想家の内田樹さんの対談本「常識なき世界を生き延びるために」(朝日新書)
  • 朝日新聞出版の公式サイトより
    朝日新聞出版の公式サイトより
  • 望月衣塑子記者と思想家の内田樹さんの対談本「常識なき世界を生き延びるために」(朝日新書)
  • 朝日新聞出版の公式サイトより

「老害」の記述を削除、創刊の経緯も差し替え

   同書は26年9月11日に刊行された。版元が10月27日に掲載した「お詫びと訂正」によると、「川中くんは周りの子から『老害』と言われたり」との記述を削除。また、望月記者が自身の息子の話として紹介した部分も川中さんの話に改めた。そのほか、「日本中学生新聞」の創刊の経緯なども訂正した。

   川中さんは10月28日朝、「日本中学生新聞」のXアカウントを通じ、正しい事実関係を説明した。最後に心境をこう記していた。

「学校内の先生や同級生について全く事実でないこと、ぼくが話してもないことを書かれたことに対してのショックは大きいです。訂正を出してもらうために時間と労力を取られていることに憤りを感じています」

   共著者である内田さんは28日夕、「ゲラを読んだ時点で気付かずに申し訳ありませんでした」とXに投稿した。

   望月記者も28日夜に投稿した謝罪文で、「事実と異なる記述を公表してしまい、深くお詫び申し上げます」「公表前に一つひとつの内容を十分に確認すべきでした」と記した。編集者を通じて直接の謝罪と説明をする機会を求めたとしている。

川中さん「検証と説明をしてほしい」

   川中さんは取材に対し、望月記者が直接の謝罪をしないまま謝罪文をXに投稿したことについて「形式だけのものに過ぎないなと感じます」と話した。川中さんによると、版元に連絡した3日後の20日には、担当編集者から望月記者と連絡が取れたとのメールが届いていたという。

「望月さんはぼくの連絡先を知っていますし、ぼくはメールアドレスも公開しています。Xに投稿する前に、会って謝罪するとか電話で謝罪するとか、直接謝る方法もあったと思います」

   望月記者が謝罪文を投稿したのは、川中さんが事実関係の誤りをXで指摘した日の夜だった。川中さんは、SNSでの批判が広がってからの謝罪だと受け止めている。

   また、誤りが生じた経緯についても「全く分かっていない」と明かした。担当編集者から届いたメールで、望月記者が「ゲラの確認をきちんとできていませんでした」と説明したとの報告を受けただけだと話す。これも20日のことだったとしている。

   28日に担当編集者からメールが届き、望月記者が直接会って謝罪する場を設けたいと書かれていたという。ただ、川中さんは「最初に謝罪するなら分かりますが、今は、なぜこういうことが起きたのかという検証と説明をしてほしいです」と話した。

   川中さんは正確な事実関係についても説明した。「老害」の記述については「一切言われてないです。この間違いは、ぼくがまるで学校でいじめられているかのように感じられる書き方です」と語った。

   望月記者が自身の息子の話として紹介した部分は、川中さんの周囲のひとたちが自己啓発本などを読んでいる話や、川中さん自身が田中角栄元首相の「日本列島改造論」を読んでいる話だった。いずれもYouTube番組で望月記者らと共演した際、川中さんが話した内容だという。ほかの箇所も実際とは異なる内容だったと述べている。

   川中さんによると、出版前に望月記者や版元から事実確認の連絡は一切なかった。同書に自分のことが書かれていると知ったのも、友人を通じてのことだった。

   版元に連絡してから「お詫びと訂正」が出るまでには10日ほどかかった。川中さんは、調べれば分かる内容なのに確認が尽くされなかったと感じている。書籍ページの「お詫びと訂正」についても、おわびの言葉が見つからず、訂正の中身も分かりにくいと話す。

   版元には、経緯の検証と説明に加え、販売中の書籍の回収や訂正文の挟み込みなどを求めてきた。川中さんは「心身ともに疲弊して限界にきたので、29日にやむを得ず代理人弁護士に頼んで交渉を任せています」と述べている。

望月記者、直接の説明とおわびができていないと認める

   望月記者は11月2日、J-CASTニュースの取材に対し、川中さんのメールが版元に届いたのが10月17日のことで、編集者がその内容を把握したのが19日だと聞いていると説明した。望月記者もその直後に連絡を受け、修正を依頼したと述べる。

   編集者を通じて直接おわびしたい旨は伝えているが、川中さん本人への直接の連絡や対面での謝罪はできていない。その後、川中さんの代理人弁護士から連絡を受け、現在は望月記者も弁護士に相談しながら対応しているという。

   川中さん本人に連絡しなかったのは、川中さんが編集部に連絡したため、「編集部を経由してのやり取りを望まれている」と判断したからだとする。

   また、訂正の内容を確かめる対談の記録も版元にあり、訂正は編集者を通じて進める必要もあったという。そのため、編集部を通じて訂正の対応を進めていたとするものの、つぎのように謝罪した。

「ただ、それは私の判断であり、ご本人への説明とお詫びについても、私から速やかに働きかけるべきでした。直接、説明とお詫びをお伝えする対応が遅れたことを反省しています」

   誤りが生じた原因や経緯については確認を進めている最中だというが、つぎのように説明した。

「現時点では、対談で話した内容が、原稿にまとめる段階で異なる表現になった箇所と、私自身の記憶違いによる箇所があったと認識しています。いずれについても、著者である私が公表前に十分に確認し、誤りを正すべきでした。確認が不十分だった責任を重く受け止めています」

   今後は、川中さんの代理人弁護士を通じて説明とおわびをする方針だ。直接のおわびについては川中さん本人の意向を尊重するとしている。確認できた経緯は、川中さんへの説明を踏まえたうえで公表する予定だという。

   望月記者は川中さんに対し「深くお詫び申し上げます」とし、つぎのように述べた。

「書籍の最終章『この国の希望』で川中さんを取り上げたのは、川中さんのような若い世代が、これからの日本の政治や社会、メディアのありようを変えていくとの思いからでした。それにもかかわらず、結果として川中さんを大変傷つけてしまいました」

制作過程で川中さん本人への事実確認をせず

   朝日新聞出版は11月1日、電子版も含め出荷・販売を中止し、書店の在庫を回収すると公式サイトで発表した。「川中様を傷つけたことを重く受け止めております」と謝罪し、原因を調査するとともに全体の内容を再点検するとした。

   訂正の申し入れから回収を決めるまでに時間がかかったことについても、川中さんと家族に謝罪している。誤りの経緯については「編集作業の過程における点検が不十分で、誤った記載に気づくことができませんでした」という説明にとどめていた。

   朝日新聞出版は2日、J-CASTニュースの取材に対し、同書は対談をもとにライターが原稿をまとめたものだと説明。「著者、ライター、編集者、校閲が内容を確認しましたが、元の発言や資料との照合が十分ではなく、誤りを発見できませんでした」としている。

   制作過程では、川中さん本人への事実確認は行わなかったと認め、「確認が不十分だったことを反省しております」とした。

   一方、川中さんへの経緯の説明や、望月記者に指摘を伝えた時期などについては「回答を差し控えさせていただきます」と回答した。

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