音楽ライター・柴 那典さん 2020年 日本の音楽シーンは「東京五輪後」の動向に注目

嵐「活動休止イヤー」の活躍を占う

―――2020年はオリンピックイヤーです。過去には、アテネ大会の「栄光の架橋」(ゆず)、リオデジャネイロ大会の「Hero」(安室奈美恵)など、テレビ局の番組テーマ曲がヒットした例が多いですが、東京五輪に関連したヒット曲は誕生するでしょうか。

 おそらく生まれるでしょう。ただ今は、番組テーマ曲に誰が起用されるか決まっていませんし、ふたを開けてみないと分からないことが多い。
現時点(取材時)で確実に決まっていることで言えるのは、五輪の開会式・閉会式に参画する椎名林檎を中心としたクリエイティブチームが、日本のポップミュージックカルチャーをどういう形で世界に示してくれるのか、という点には期待しています。

―――年末には嵐が活動休止を迎えます。最終年はどんな活躍をするでしょうか。

 まずは「NHK2020ソング」として紅白歌合戦で初披露される、米津玄師作詞・作曲による新曲「カイト」は大きな話題を呼ぶと思います。加えて、海外における存在感をどう発揮し、人気と支持をどれだけ得られるか期待しています。19年11月に発表された楽曲「Turning up」には、「世界中にJ-POPを広めよう」というメッセージが込められていました。「J-POP代表」としての嵐が、世界に対してどれだけ影響を広めていけるのか。20年のトピックの一つになる気がします。

―――ほかに、2020年で注目される音楽シーンの動きはありますか。

 五輪後の動きの方が重要だと思っています。五輪までは、ある意味でテレビ中心のこれまでの時代のムードが引きずられるからです。起こるべきは「世代交代」です。海外では、前年まで全く無名だったミュージシャンが、新しい価値観を示し、一挙にシーンの流れを変える事態が2019年に起きました。その象徴がビリー・アイリッシュ(18歳の米女性歌手。音楽共有サイトに投稿した楽曲が注目を浴び、世界的スターになった)です。彼女が登場した背景には、メディアの変化に伴い音楽の聴かれ方が変わったことで、これまでのマーケティングやプロモーションが通用しなくなった点にあります。
日本においても、これまでの常識や「ヒットの法則」を覆すアーティストが出てくることに期待しています。

柴那典(しば・とものり)
1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立、雑誌、ウェブなど各方面にて音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は「AERA」「ナタリー」「CINRA」「MUSICA」「リアルサウンド」「ミュージック・マガジン」「婦人公論」など。日経MJにてコラム「柴那典の新音学」連載中。CINRAにてダイノジ・大谷ノブ彦との対談「心のベストテン」連載中。著書に『ヒットの崩壊』(講談社)『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版)、共著に『渋谷音楽図鑑』(太田出版)がある。
ブログ「日々の音色とことば」http://shiba710.hateblo.jp/ Twitter:@shiba710

  出典元:J-CASTニュース トレンドhttps://www.j-cast.com/trend/

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